鹿児島から世界へ、第三国にも斬り込む南薩観光の拡大戦略
貸切バス3台から旅行業へ、訪日でも成果
「まずは走って考える」菊永社長のグローカル展開
今後の世界を見据えたグローバル事業への挑戦に、地方も中央もない。そんな意気込みを感じさせてくれるのが、鹿児島県の南九州市知覧町に本社を置く南薩観光の事業展開だ。マイクロバス3台による貸切バス事業から始めて旅行業に進出し、訪日旅行のランドオペレーターや地域の観光地開発などにとどまらず、近年は積極的な海外事務所の開設で第三国市場の開拓にまで斬り込んでいる。同社のこれまでの取り組みや今後の戦略・目標などについて、代表取締役社長の菊永正三氏に詳しい話を聞いた。(聞き手:トラベルビジョン代表取締役会長 岡田直樹)
菊永正三氏(以下敬称略) 当社はもともと貸切バス事業から出発した会社で、1984年に免許を取得して事業を開始した。その後、99年には事業承継のため、旅行会社で12年間勤務した私が入社し、あわせて第2種旅行業登録を取得して旅行事業を開始している。
現在の社員数は41名で、貸切バスの乗務員が20名ほどおり、残りは主に営業担当として、製販一体体制で地域に根付いた営業活動を進めている。近年では外国人も積極的に採用し、現在は中国・フィリピン・スリランカ出身の4名を雇用している。過去には米国人や台湾人、タイ人も採用したことがある。
ちなみに、貸切バス事業と旅行事業を手掛けるなかで、当社は日本バス協会の「貸切バス安全評価認定制度」の3ツ星、日本情報経済社会推進協会の「プライバシーマーク」、日本旅行業協会(JATA)の「ツアーオペレーター品質認証制度」における品質認証の3つを取得した。このことは自慢できると考えている。
菊永 昨年度の売上高は約6億3000万円で、そのうち貸切バス事業が3億円、アウトバウンド・インバウンドの両方からなる旅行事業が2億5000円、行政からの受託事業などの「グローカルデザイン事業」が7000万円を占める。アウトバウンドの主力は社員旅行や報奨旅行、学会関係などのMICEが中心で、旅行事業の売上高の8割以上がこれらの法人需要によるものだが、業務渡航の取り扱いは少ない。
インバウンドについては、コア事業である貸切バス事業の成長をめざして01年から手掛けているが、転機となったのは韓国のネットワークビジネス企業の大型インセンティブ団体を受注したことで、6000人分の地上輸送と観光、食事を受注した。04年の実施に向けて、02年にはソウルに現地事務所を開設して備えたが(実施後は閉鎖)、この時の経験がインバウンドに注力するきっかけとなった。その後、中国からの旅行者の受け入れも開始し、教育旅行を中心に取り組んでいる。
今ではインバウンドが重要な収益源の1つとなっていて、経常利益の68%を稼いでいる。売上高は大きいものの利益率が低い貸切バス事業に対して、インバウンドは売上高がほどほどでも利益は大きい。中国でも旅行者のFIT化は進んでいるが、鹿児島空港を利用する団体需要は拡大していることが幸いしている。