羽田国内線枠、航空6社から回収・再配分の意見聴取-第2回会合
国土交通省航空局は3月12日、「羽田発着枠配分基準検討小委員会」の第2回会合を開催した。日本の航空旅客の6割が使用する羽田の国内線用発着枠の使用許可が2020年1月で5年間の期限を迎えることから、以降の配分方法について検討するもの。この日は国内航空会社6社からのヒアリングを実施し、全日空(NH)と日本航空(JL)からは執行役員、スカイマーク(BC)、エア・ドゥ(HD)、ソラシドエア(6J)、スターフライヤー(7G)からは代表取締役社長が出席した。
ヒアリングでは各社がくじ引き順で、羽田路線の活用状況や発着枠の回収・再配分などに関する考えを説明した。7J代表取締役社長執行役員の松石禎己氏は、これまでの評価項目に加えて新たに「地方発着の国際線路線数」「定時出発率」「顧客満足度」を盛り込むことを要望。HD代表取締役社長の谷寧久氏は、路線網の多様性を形成する観点から既存の「地方枠」を回収対象から除外するとともに、大手2社との格差是正の観点から「特定既存航空会社(7Gなどの新興航空会社)」に付与されている優先枠も除外することを求めた。
JL常務執行役員経営企画本部長の西尾忠男氏は、まずは「国内線の増枠実施がないなかにおける発着枠回収については、最小限にすべき」と要望。その上で「最大でも、政策枠の見直し分7枠を含めて前回増枠規模の25枠程度が適当」と述べた。また、再配分時の評価項目には政府が進める観光立国と地方創生への貢献度を評価対象に追加することを求め、同社が国内の294路線で「乗継割引」を設定していることなどをアピールした。
NH執行役員企画室長の平澤寿一氏は、羽田における年間利用者数40万人未満の「少需要路線」の7割を運航するなど、地方路線の維持や訪日外国人旅行者の地方送客などに貢献していることをアピールし、回収についてはJLと同様に「極めて抑制的に実施すべき」と求めた。また、これまでは優遇されていた特定既存航空会社の発着枠については、今後は回収対象にするとともに、再配分時の優先配分方針も改めるなど、評価方法の見直しも求めた。
一方でBC代表取締役社長の市江正彦氏は「大手と特定既存航空会社では、事業規模に限らず利益水準や経営体力に関しても大きな格差が存在する」と主張し、引き続き「一定の政策的考慮」が必要と要望。一層の競争促進に向けて「大手から25枠程度を回収し再配分」する案を提言した。そのほかには、発着枠が増えた際に新路線を開設し、地方創生に貢献する姿勢を表明。先の経営破綻については、公的資金を投入したJLの事例とは異なることを強調し、「破綻した事実のみをもって配分対象から除外することは適切でない」と訴えた。
6J代表取締役社長の高橋宏輔氏(高ははしご高)は、九州ローカルの航空会社として各自治体と連携協定を締結し、海外チャーター便の運航などで地方創生に貢献していることなどを訴求。回収については大手2社との事業基盤の差などを勘案し「経営に与える影響から5%から10%など上限値が必要。また、公平性から各社一律にすべき」と述べた。再配分に関しては「健全かつ自律的競争の観点から、破綻事業者には実質的なペナルティが課されるべき」と主張した。
そのほか、ヒアリング後の委員を交えた意見交換では、運賃の低廉化に向けた努力を評価項目に入れるよう提案した航空会社に対して、委員が「取り組むのは良いが、それよりも値段が上がっても利用されるような需要創出を」と要望。また、経営破綻へのペナルティに関しては「回収と再配分の目的と過去の破綻は関係ない。今後のプロミスを達成できなかった場合にしたほうが良いのでは」などの意見が挙がった。そのほか、複数社が羽田線の黒字を不採算路線の補填に充てている現状に理解を求めた。
なお、オークション形式での発着枠配分については、資金力のある航空会社による寡占の可能性などから、新興系4社が反対しただけでなく、大手2社も「解決すべき問題が多く、導入は困難」(JL西尾氏)との見方を示した。LCCへの配分に関するコメントは無かった。
次回は4月26日に開催し、地方自治体を代表する意見として、全国地域航空システム推進協議会からヒアリングを実施。また、日系大手2社から羽田発着枠政策コンテストに関する意見を聴取する。取りまとめは夏頃をめどに実施する予定。