ソニーコーポレートサービス部長が考えるインハウスの価値と未来、BTMのあり方
航空券もホテルも、手配するだけなら誰もがオンラインで簡単にできる現在。業務渡航系旅行会社はますますサービスの価値が問われており、それはインハウス旅行会社も同様だ。全世界に約50万人という従業員を抱える大企業ソニーにあって、同社のインハウスであるソニーコーポレートサービスはどのように機能しているのか。総務センターのトラベルマネジメント部統括部長、吉原泰章氏に話を聞いた。
吉原泰章氏(以下敬称略) 現在のソニーコーポレートサービス株式会社ができたのは2012年。ソニー・ヒューマンキャピタル株式会社とソニーファシリティマネジメント株式会社が合併し、さらにソニー株式会社の総務機能が移管された。その後、2014年にソニー株式会社の経理機能、2016年に人事機能が移管され、現在はソニーグループの総務、経理、人事を預かるプラットフォーム会社となっている。
吉原 入社後最も長く携わったのは、ソニーグループの主要なリスクを保険でリスクヘッジする仕事で、国内外での保険の調達や海外の再保険会社の運営、災害対策やBCPなどの取り組みによって会社のリスク自体を低減していくリスクマネジメント業務を担当してきた。
現在は、総務センターのトラベルマネジメント部と保険ソリューション部の部長職およびソニーコーポレートサービスの子会社である株式会社シー・エス・ビルサービスの社長という3役を担っている。
吉原 これは自分の推測に過ぎないが、海外航空券も、保険と同様に、海外のグループ会社を含めたグローバルな調達をおこなっていたため、保険で類似した業務を経験していた自分が兼務することになったのだと思う。
吉原 ある程度保険と同じやり方でいけると予想していたが、実際はかなり違っていた。
保険は商品の実体が契約であり、需給バランスの兼ね合いで儲かる状況になると、金融マーケットから追加資本が流入することで需給バランスが比較的速やかに回復していたが、旅行は座席や部屋といった物理的サービスを特定の時間に提供するという物理的・時間的制約のある商品であり、また、空港の発着枠の制約や社会構造的な旅行者数の増減など、マーケットの需給バランスの調整がタイムリーにおこなわれにくいという点で、保険とは大きく異なっている。
また、保険のリスクはほぼ世界共通で、損害を補償してくれるのであれば保険会社の国籍もそれほど問われないが、旅行の場合は供給面でも、また顧客の好みと言う点でもナショナルフラッグの存在が大きい。
さらに購買の観点からも、保険の場合は契約イコール購買で、会社の判断で完結するのに対し、旅行の場合、契約は会社が締結しても、購買の局面ではどの航空会社やホテルを使うかなどは出張者が選択するため、契約イコール購買とは限らないという点など、保険と旅行の違いは大きい。