観光庁、Ctrip問題で海外OTA利用に再度の警鐘-日本法人は「関与なし」
観光庁は12月6日、ウェブサイトで消費者向けに、海外OTAを利用する際には契約条件や日本の旅行業法登録の有無などについて確認するよう、改めて注意を呼びかけた。Ctrip.com Internationalがグローバル展開している旅行販売サイト「Trip.com」が、国内宿泊施設の許可なく消費者からの客室予約を受け付け、受付と同時にキャンセルできない形で宿泊代金を収受していると一部メディアに報じられたことを受けたもの。
同庁は4日には、日本法人のCtrip Japanに対して立入調査を実施。なお、同庁の説明によれば、調査はCtrip Japanが11月に第3種旅行業から第1種に登録を変更したことを受けてかねてから予定しており、報道を受けて今回の件についても調査したという。
報道によれば、Trip.comはすでに満室となっている高級旅館などの客室を「在庫あり」と掲載し、通常よりも高額かつ返金不可の条件で予約を受け付けていたという。その場合、消費者は宿泊料金を支払ったことで予約が確定したと誤認する一方、実際の扱いは「キャンセル待ち」で、その後も客室を確保できなければ宿泊できない結果に陥ることになる。あわせて施設側は「勝手に予約をキャンセルされた」などと非難される恐れがある。
このことについてCtrip Japanは、同サイトでは宿泊施設から直接空室を仕入れて販売するほか、空室を抱える旅行会社などから仕入れた枠も販売する形を取っており、今回報道された件については「一部の悪質な業者が空販売をおこなっていたことが社内調査により判明した」との説明。また、調査を実施した観光庁によれば「Trip.com」の運営は中国の本社が担っており、Ctrip Japanは仕入れなどに一切関与していなかったため、現状では観光庁が指導・監督できる状況にないという。Ctrip Japanは現在、事実とは異なり「空室あり」と表示されている客室については順次削除しており、悪質な販売を続ける業者については摘発して永久に取引を停止するとしている。
なお、消費者から収受した宿泊料金についてはあくまでもデポジットであり、予約が確保できなかった場合については全額返金している旨を説明。「キャンセル時には100%のキャンセル料が発生する」との報道については否定した。宿泊施設から直接空室を仕入れるとともに、空室を抱える旅行会社などから仕入れた枠も販売するビジネスモデルについては「ユーザーに少しでも多くの宿泊プランを安価に提供していきたいという想いによるもの」と述べている。
同庁は2015年に、日本国内における利用者増とそれに伴うトラブルの増加を受けて、OTAや比較検索サービスのウェブサイトに必要な表示ルールなどを示したガイドラインを公表。策定にあたっては海外のOTA2社と比較検索サイト運営会社1社にも意見を求めており、ガイドラインでは日本での事業については日本の法律を遵守するよう求めていた。
今回のTrip.comの問題については、「日本版のウェブサイトを開設して、日本での事業を開始したのはガイドライン策定後と認識しており、新たな会社にはアプローチを強化する必要があると感じている」とコメント。今後は引き続き、消費者への注意喚起に努めるとともに、事実関係の把握に取り組むとしている。なお、今回のケースについては「各社の約款に則った形で対応していただくことになるが、標準旅行業約款について言えば、サプライヤーの規定に準拠することとしているので、日本の業者が同じことをすればアウト」と述べている。
なお、Ctrip系列の日本法人にはこのほか、東京都の第3種旅行業登録を取得しているCtrip Air Ticketing Japanがあり、観光庁は同社が「Trip.com」の運営や仕入れに関与している可能性も考えられるとしているが、同社は本誌の質問に対して関与していない旨を回答している。ちなみに6日夕方の時点で東京都の産業労働局観光部は今回の事態については把握しておらず、観光庁からも連絡は受けていないという。