「流通」のその先へ-GDS4社社長に聞く現状と今後
-GDS座談会・前編
四社四様の成り立ちと成長戦略
航空会社と旅行会社に新たな価値を
テクノロジーの進化によって、旅行業界の流通を取り巻く環境は大きな変化の中にある。航空券の流通の一翼を担ってきたGDS各社も、持続可能な成長に向けてさまざまな取り組みを加速させているところだ。トラベルビジョンはこのほど、GDS4社の日本のトップによる座談会を開催。各社の現在の立ち位置やGDSの役割、そして将来に向けた新しい取り組みについて意見を交わした。今回、2回にわたってその様子をレポート。第1回は、各社のGDSの特徴や航空会社との関係、各社の強みについて、次回は話題のNDCへの取り組みや今後注目されるテクノロジーなどについてまとめる。
アマデウス・ジャパン代表取締役社長 竹村章美氏
インフィニ・トラベル・インフォメーション代表取締役社長 植村公夫氏
トラベルポートジャパン代表取締役社長 東海林治氏
植村公夫氏(以下、敬称略) インフィニは、アジアの航空会社を中心としていたアバカス(ABACUS)と全日空(NH)がタッグを組んで1990年に設立された。2000年には、ホストコンピュータを、2012年には運賃システムをセーバーへ移行。現在、GDS事業では、FSCに加えてLCCの手配をおこなっているほか、ホテル、レンタカー、ランドへも事業を拡大している。
その成り立ちから、日本市場に特化してビジネスを展開している。その点が他のGDSとは異なる点だろう。事業エリアとして、それが強みになっているが、今後はグローバルな機能をうまく使いながら、ビジネスを展開していく必要があると思っている。
添川清司氏(以下、敬称略) 日本航空(JL)の予約システムJALCOMをベースに、1991年に現在のアクセス国際ネットワークとして分社独立した。さらにグローバルな競争力を確保するため、1995年にセーバーとの業務提携を経て、2012年にJALグループ100%出資会社になった。2013年からはホストシステムにトラベルポートを採用している。
GDS事業では、日本地区に特化したマーケットニーズに基づき、常に新たなシステム・サービスを提供してきたが、グローバル化の潮流に対応するために、2013年のホストシステム刷新を決断。2016年には次世代予約発券システムとして「AXESS CREA Advance」をリリースした。アクセスは、JLの予約システム「CRS」として誕生したが、単一的な予約システムから、より多角的な幅広いコンテンツを旅行会社に提供するシステムへとマーケットニーズが変わるなか、旅行・航空にかかわるプラットフォームを提供するGDSに変遷してきた。
日本の旅行会社に育てられたという意識のもとで、日本の旅行会社に貢献したいと思っているが、テクノロジーによるシステム革新が起こっているなかで、グローバルを意識したビジネス展開は必要だろうと思っている。JLでは日本発のシェアが減っている。今後、外地発とのシェアは半々になるだろうと見ている。
竹村章美氏(以下、敬称略) アマデウスは世界の旅行業界に特化したテクノロジーカンパニーとして1987年にエールフランス(AF)、イベリア航空(IB)、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)、スカンジナビア航空(SK)などが中心となって設立された。GDS事業では、日本法人が設立されて4年後(本社設立20年後)の2002年には、1日当たりのブッキング数が100万件を超えるまでの規模まで成長。今日では毎秒7万5000件のエンドユーザーリクエストを処理し、1日あたり400万件の搭乗者数を扱うシステムを提供している。
しかしアマデウスとしては、GDSを卒業していく。単なる流通の仕組みではなく、テクノロジーで旅行業界をサポートするITプロバイダーとして、旅行会社、航空会社双方にソリューションを提供している。それによって、業務の効率化、旅行全体の効率化をめざしていくのが使命だと考えている。
東海林治氏(以下、敬称略) GDSは流通の一部の機能だという認識だ。トラベルポートでは、旅行の流通をトラベルコマースと再定義した。トラベルコマースプラットフォームの上で旅行会社に価値の高い商材を提供し、消費者の選択肢を広げていく。一方で、航空会社やホテルなどサプライヤーは、そのシステムを活用してそれぞれの価値を高めていく。トラベルポートとしては、中間的な役割で旅行業界に協力しているところだ。