Airbnb創業者、新法施行で「長期的投資」-宿泊取消には言及せず
Airbnbが6月14日に都内で開催した記者会見で、共同創設者兼最高戦略責任者のネイサン・ブレチャージク氏は、翌15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行について「日本で初めてホームシェアリング経済が正式に立ち上がる日。ワクワクするとともに、我々が参加できることを誇りに思う」と喜びを示した。同氏は2017年に日本に滞在したゲストが600万人に及んだことを説明し、日本市場のポテンシャルを強調した上で、「長期的な投資をおこなう」とアピールした。投資額は3000万米ドル(約33億円)以上を見込む。
同氏は「日本での原則」として、「明確で公平なルール」「地域に根ざした形」「クオリティ」「コミュニティの活性化」「イベント時の宿泊施設の充実」の5点を挙げた。「明確で公平なルール」では「未登録のホストの啓蒙をおこない、(民泊などへの)登録を促すことで法令を遵守していく」ことを強く主張。全国60都市でホストの開拓と勉強会を兼ねたイベントを開催するとともに、届出未完了のホストにはメールで届出を呼びかけ、法律の専門家を招いたセミナーを開催するなどのサポートを実施するという。
「地域に根ざした形」では、日本企業36社と協力してホストとゲスト向けの多様なサービスを展開するAirbnb Partners(エアビーアンドビー・パートナーズ)の立ち上げを発表(関連記事)。「クオリティ」ではゲストからの評価が高く、同社独自の基準を満たした施設のコレクション「Airbnb Plus」の提供を、年内に東京、京都、大阪で開始することを明かした。「コミュニティの活性化」では京都府や岩手県釜石市、宮城県塩竈市などで古民家や地域ならではの体験をアピール。「イベント時の宿泊施設の充実」では19年のラグビーW杯や20年の東京五輪に協力する旨を語った。
同社は6月1日に発出した観光庁の通知を受け、このほど許可のない民泊物件をウェブサイトから削除。民泊物件の削除件数は一部報道によると約4万8000件に及ぶという。なお、国土交通省によると、6月12日までの民泊ホストの「住宅宿泊事業者」の届出件数は約3000件。
加えて、同社は6月15日から19日の宿泊予約をキャンセルし、20日以降の予約分についても届出がなければチェックインの10日前に自動的にキャンセルする旨をユーザーに通知している。宿泊代金はAirbnbが全額を返金し、旅行のプラン変更を余儀なくされたユーザーの損害補填として約11億円相当の基金を設立し、代替施設の確保や航空券の変更手数料などをサポートしている。
ただし、Airbnbは民泊物件の具体的な削除件数や、ホストのキャンセル件数などは非公開としているところ。今回の会見でもこうした動きに対するコメントは一切なく、当初予定していた質疑応答も、登壇者のスケジュール変更を理由に中止した。同社の対応状況などは明らかにならないまま、民泊新法の施行を迎えることとなる。