現地レポート:ドレスデン、観光客を惹きつける歴史と新たな魅力
バロック様式の旧市街を散策
新市街で最新のアートも
ドイツ最大のインバウンド旅行商談会「ジャーマン・トラベル・マート(GTM)」の今年の開催都市となったザクセン州の州都ドレスデンは、ドイツ東部きっての観光都市。海外からだけでなくドイツ国内からも多くの観光客を惹きつけている。1800年代にはザクセン王国の首都として栄え、第2次世界大戦では連合国による大空襲「ドレスデン爆撃」という悲劇も味わった。しかし戦後の復興からドイツ統一を経て、今では最新のトレンドを発信している都市としても名高い。日本の京都にも喩えられる古き良き「昔」と、テクノロジーとアートに代表される新しく斬新な「今」のドレスデンを巡ってみた。
重厚な旧市街、ドレスデンの現代史は復興の歴史
エルベ川沿いに広がるドレスデンは、アウグストゥス橋を挟んで旧市街と新市街に分かれ、それぞれ異なる表情を見せる。旧市街は石畳の道にバロック様式の建築物が立ち並んでおり、代表的なのが「フラウエン教会(聖母教会)」。ドーム型の教会は重厚な雰囲気が漂う旧市街の中でも、どこか優しい佇まいだ。今でこそドレスデンのシンボル的な存在となっているが、爆撃では壊滅的な被害を受けた。再建がスタートしたのはドイツ統一後の1994年で、残存した瓦礫のパーツをひとつひとつ忠実に元に戻す作業を続け、2005年にやっと完成。ドレスデンだけでなくドイツにとっても、平和と統一を表す特別な存在になっている。
フラウエン教会が女性的な建築だとすれば、「ツヴィンガー宮殿」には男性的な力強さが感じられる。ザクセン王国の栄華とアウグスト強王の権力を象徴する建築で、中庭に一歩足を踏み入れると、バロック様式の豪華な装飾に圧倒される。内部にはマイセンや有田焼などの陶磁器を集めた「陶磁器コレクション」や、中世の武器類を展示する「武器博物館」、ヨーロッパの古典絵画を収蔵する「アルテマイスター絵画館」など見ごたえのある美術館や博物館が入る。
19世紀に建築家のゼンバーによって建てられた「ゼンバー・オーパー」は、リヒャルト・ワーグナーの「さまよえるオランダ人」や「タンホイザー」が初演された世界的にも有名な歌劇場。内部は英語のガイドツアーと見学できる。
筆者は幸運にも、実際のオペラを鑑賞する機会を得た。題目はジョゼッペ・ヴェルディの「運命の力」で、休憩2回を挟んで合計3時間40分。イタリア語のオペラだが、舞台上部には英語の字幕も映し出されるためストーリーを理解することができる。
立体感のある舞台装置と巧妙なライティングは1枚の名画を見ているようで、ため息が出るほど美しい。劇場には着物で正装した日本女性の観客の姿も。「オペラを鑑賞するためにドレスデンへ」といったラグジュアリートラベルの可能性も、この街は持っている。