クオニイ、JTB傘下も「変わらない」、欧州以外の強化も継続

  • 2017年6月26日

 クオニイジャパン代表取締役社長のビクトー・ロペス氏が本誌取材に応じ、5月30日に発表されたジェイティービー(JTB)による買収後も、日本市場においては「何も変わらない」との見通しを語った。むしろ競争力が増す側面もあり、従来通りツアーオペレーターとしての営業を継続、強化していく考えだ。

 クオニイグループはこれまで、団体旅行の手配部門として「GTS(Global Travel Services)」、FIT旅行に対応する「GTD(Global Travel Distribution)」、各国政府にビザ発給業務の受託サービスを提供する「VFS(VFS Global)」の3社を置き、その下に各部門の機能に合わせた子会社を集約していた。

 現在では、GTDの中核であったGTA(旧ガリバーズ・トラベル・アソシエイツ)をホテルベッズへ売却。GTS内でも、北米の「Allied T pro」、アジアの「AsianTrails」、オーストラリアの「Australian Tours Management」、中東の「Desert Adventures」と「Gulf Dunes」、アフリカの「Private Safaris」の各社からなる事業部門「DMS(Destination Management Specialists)」がトーマス・クック・インディア・グループに譲渡されることが決まった。

クオニイジャパン代表取締役社長のビクトー・ロペス氏

 これに対してJTBはGTS自体を買収することで、欧州とニュージーランド及びグローバルMICEの手配機能と、クオニイジャパンをはじめとするセールスオフィスを手に入れたかたちだ。

 JTBグループの発表文では、日本を含むアジアから欧州への旅行市場においてツアーオペレーター事業に注力していく方針が示されているが、クオニイジャパンではこの5年ほどオセアニアや北米、南米、南アジアなど、主力である欧州以外への送客にも力を入れてきており、現在では非欧州が約2割を占めるまでに成長している。

 ロペス氏は、例えば欧州と季節が逆のオセアニアに取り組むことで収益機会を増やすことができ、また欧州への集中を避けることで昨今の政情不安などのリスクヘッジも可能と説明。もともとは非欧州を4割にまで高める目標を掲げており、将来的にJTBがどのような判断を下すかは不明ながら、本社からは戦略的には何ら変わることはないと聞いているといい、引き続き多方面の手配を続けていく考えだ。

クオニイ・グループ 売却相関図(概略)※クリックで拡大

 DMS各社と資本関係がなくなる点については、従来から受けを依頼していたオーストラリアと中東、アフリカは対象4社との関係を維持するため特に影響はなく、むしろこれまでは「遠慮があった」という他社への相見積もり依頼も可能になるため競争力が増していくと分析。アジア圏は従来通り第三者を利用する。

 なお、HISによるミキ・ツーリストの子会社化と同様、他の取引先からの懸念があると考えられるが、ロペス氏によると「様々な反応もあった」ものの、「『今の時代、資本と経営は別』と仰っていただく方も多かった」という。また、東南アジアなどでは好意的に受け取られる傾向があるという。