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豪州、70万人に向け座席増へ、業界も意欲示す-商談会開幕

ATE会場の様子(シドニー発:松本裕一) オーストラリア政府観光局(TA)は5月15日、シドニーで旅行業界向けイベント「AUSTRALIAN TOURISM EXCHANGE(ATE)」を開幕した。ATEは現地の観光関係業者や観光局などサプライヤーと世界各国から集まる旅行会社を中心としたバイヤーが一堂に会する商談会で、今年で38回目。今年はセラーが過去9年間では最多となる555社、バイヤーが548社集まったといい、日本市場からは34社のバイヤーが参加した。また、ATEの開幕に合わせて、日本旅行業協会(JATA)のオーストラリア旅行促進部会も初めて現地で会合をもち、市場拡大に向け戦略を協議した。

 TAは日本市場の旅行消費額について、2015年に13億豪ドル(約1097億円)であったところから、20年には為替変動の可能性などを含めて27億豪ドル(約1856億円)から33億豪ドル(約2785億円)までの間で拡大可能とする目標を掲げて各種施策を展開しているところ。そして、日本旅行業協会(JATA)との間で16年に交わした覚書(MOU)では、1人あたりの消費額なども考慮して20年の日本人訪問者数の目標を70万人に据えた。

 こうしたなかで16年の日本人訪問者数は、カンタス航空(QF)の増便や全日空(NH)による約16年ぶりのシドニー線就航などにより前年比22.7%増の41万3800人となり、TAとして17年は約2割増となる50万人をめざしているが、現状としては1月から3月までの第1四半期で約15%増。目標となる2割増に届いていないことになるが、ATEの会場で日本からのメディアの取材に応じたTA本局局長のジョン・オサリバン氏は、通年では15%から25%の増加を期待できると説明した。

 70万人達成に向けて座席の維持と増加が必須。TA日本局長の中沢祥行・ジョー氏は、これまでの国際航空運送協会(IATA)などでの経験も踏まえ、羽田における増枠の議論が具現化して実際のキャパシティ拡大に繋がるのが19年冬ダイヤ以降と予測。それまでの目標として関空や中部など首都圏以外の空港から路線開設をめざすと語った。また、そのための施策として、従来の取り組みに加え、業務渡航需要の鍵をにぎるインハウス旅行会社などへの働きかけも念頭に置いているという。

 また、70万人に向けてオサリバン氏は、日本市場に投下する予算を拡大すると表明。TAでは、日本市場に限らず消費者向けのオンライン広告を強化する考えで、日本では市場特性に合わせて最適化し、さらにユーザーの興味に応じた内容で広告を配信していく。その際には食事とワインの「美食大陸オーストラリア」や、ビーチなどに焦点を当てた「絶景大陸オーストラリア」など、この数年間で取り組んできたテーマは継続するという。

 一方、JATAオーストラリア旅行促進部会では、70万人を見据えて旅行会社側で取り組むべき課題などについて航空会社や観光局も交えて議論。同部会メンバーはジェイティービー(JTB)やエイチ・アイ・エス(HIS)、阪急交通社、KNT-CTホールディングスなど大手が中心だが、今回の会合では個社では解決が難しい、業界全体で取り組むべき課題について話し合った。

 部会長を務めるJTBワールドバケーションズオセアニア企画チームチームマネージャーの福嶋淳子氏とJATA海外旅行促進部副部長の村井秀彰氏によると、例えば現在のキャパシティ拡大や訪問者数の伸長が一過性のものになる可能性もあるとの危機感と、TA側と同じくさらなる座席増が不可欠との認識を共有。

 そのうえで、旅行業界としてオーストラリアの魅力を伝えられる商品や新しいデスティネーションの商品などの企画、TAや航空会社との連携によるプロモーションなど、個別の旅行会社では実現しにくい課題解決策も議論され、帰国後1ヵ月程度を目処としてこうした議論やATE期間中に得た知見をもとに20年までのロードマップを取りまとめていく方向性が固まったという。