旅行会社はDMOにどう関わるべきか-JATA経営フォーラム

地域におけるマーケティングの重要性を確認
旅行会社とDMOで観光資源の発掘を

会場の様子  観光庁が観光による地域活性化をめざして日本版DMO(Destination Management Organization)の設立を推進しているなか、旅行会社はDMOへの関わり方や地域活性化における役割について模索を続けている。2月下旬に開催された「JATA経営フォーラム2017」の分科会Cでは、DMOの観光地域づくりにおける旅行会社の役割とビジネスのあり方をテーマに議論を展開。パネリストを務めた3社の実例を踏まえながら、旅行会社と地域の協業について知見を深めた。

パネリスト
島ファクトリー代表取締役 青山敦士氏
観光販売システムズ 観光マーケティング事業部行政・観光企画課課長 菅原礼司氏
東日本旅客鉄道 鉄道事業本部営業部担当部長 高橋敦司氏

モデレーター
山陰DMO「山陰インバウンド機構」代表理事 福井善朗氏


「島宿」で離島の観光を振興、課題はマーケティング

  DMOは観光に関係する組織の取り込み、データ収集や分析、民間の手法の導入など、これまでの観光地域づくりで課題とされてきた取り組みを見直すとともに、各地域で内外の人材や多様な関係者との連携を求めている。今回の分科会に参加したパネリストはいずれもDMOではない民間企業だが、観光による地方創生には積極的に携わっており、その実績と経験からDMOのあり方や旅行会社との関係について提言した。

 モデレーターの福井氏は冒頭で、旅の「目的化」が進むなか、観光に必要な3つのD(Demand、Destination、Distribution)について、「特にDestinationを大切にすべき」と指摘し、「DMOの役割は大きい」と述べた。一方で「DMOの活動には旅行会社の顔が見えない。もっと旅行会社のノウハウが生かされるべき」と問題を提起し、議論を進めた。

島ファクトリーの青山氏 2013年に島根県隠岐郡の海士(あま)町観光協会と地銀ファンドによって設立され、旅行業とリネンサプライ業を営んでいる島ファクトリー代表取締役の青山敦士氏は「ミッションは、自主事業によって島を繁盛させること」と説明。そのなかの取り組みの1つとして、09年から実施している宿泊業振興プロジェクトの「島宿」を紹介した。

 同プロジェクトでは清掃スタッフなどバックヤードの人材を充実させることで、民宿の品質を向上。それに伴い単価も従来の7350円から9800円に上げたが、宿泊数は増加した。経営の安定により、近年では隠岐諸島に計110軒あった民宿が60軒ほどに激減したところ、海士町に限っては減らなかったという。

 青山氏は「離島観光の肝は宿業」と強調。一方で「旅行者に近いマーケティングができていない」と課題も挙げ、旅行会社の協力を呼びかけた。