海外リスク「旅行会社が情報提供を」-邦人安全協・小野氏

  • 2017年1月25日

小野氏  海外邦人安全協会会長の小野正昭氏はこのほど本誌の取材に応じ、ここ数年頻発している海外でのテロ事件などに対して旅行会社が取るべき対応について語った。近年の動向については「これまでは旅行者が『巻き込まれる』時代だったが、今日では『旅行者もねらわれる』時代になった」と説明し、「旅行会社も旅行者も意識を変革する必要がある」と強調。その上で「事前にリスクを最小限化すれば、旅を楽しむことは大いに可能」とも述べ、旅行会社には旅行者への情報提供体制や危機管理体制の構築、スタッフの教育などへの注力を呼びかけた。

 小野氏はそのなかでも「安全確保に向けた旅行者への情報提供こそ、旅行会社ができる最大のサービスの1つでは」と語り、同協会が提供している「海外安全マニュアル」や、外務省が発出する海外安全情報、海外旅行登録サービス「たびレジ」などの積極的な活用を要望。利用者の旅行意欲の減退を恐れずに最新の正確な情報を提供することが、結果的には旅行業界を守ることになるとの見方を示した。あわせて魅力的な商品の造成に務めて旅行需要を喚起すること、トラブルが発生した際には誠実な対応に努めて信頼を獲得することが、旅行会社の生き残りにつながるとした。

 同協会は、1976年に外務省所管の社団法人「海外生活情報センター」として設立。現在は観光目的の旅行者に限らず、日本企業の出張者や駐在員などの安全確保に向けて、定期的にセミナーや講演会を開催するなど情報提供に努めている。役員は大使経験者やリスク対策関連企業の危機管理責任者、日本旅行業協会(JATA)事務局長などが務め、会員企業約110社のなかにはジェイティービー(JTB)や日本旅行、阪急交通社、全日空(NH)、東日本旅客鉄道(JR東日本)なども名を連ねる。

 2013年から会長を務める小野氏は1970年に外務省に入省し、在エジプト大使館勤務時の73年には第4次中東戦争下で日本人旅行者の脱出を支援。その後も外務次官秘書官時代の86年には三井物産マニラ支店長誘拐事件、領事移住部長時代の2001年には米国同時多発テロ事件、駐メキシコ大使時代の09年には新型インフルエンザの流行への対応にあたるなど、海外での日本人の安全確保に関して数々の経験を持つ。

※インタビューの詳細は近日掲載予定