itt TOKYO2024
itt TOKYO2024

かもめ、婚活会社傘下で成長持続めざす、売上・利益10%増へ

  • 2017年1月10日

中本氏は1973年生まれ。大学卒業後は日本興業銀行に入行し、企業審査・M&A業務・企業再建支援業務などに従事していた  「かもめツアー」など自社ブランドによる海外パッケージツアーなどを取り扱うかもめは、昨年12月に全株式を婚活サービス会社大手のIBJに売却し、完全子会社となった。IBJ代表取締役副社長との兼任でかもめの代表取締役社長に就任した中本哲宏氏は本誌の取材に応え、「旅行会社ではIBJのように売上・利益ともに2割増を続けることは難しいが、シナジーを生み出して5%から10%程度の成長は持続したい」と抱負を語った。

 中本氏によれば、2000年に創業したIBJは売上高ベースで約1割の市場シェアをもつ業界のトップ企業。年間の成婚カップル数は4000組から5000組に及び、16年12月期の売上高は52億1000万円、経常利益は11億1000万円、当期純利益7億6400万円となる見込み。事業領域は当初の「婚活領域」から、結婚に伴い発生するさまざまな消費を含む「ライフデザイン領域」へと拡大しており、旅行業参入の「ご縁」は設立当初から求めていたという。

 かもめについては、IBJと同様にBtoCとBtoBの安定した販売チャネルを持っていること、安定した経営基盤を有することなどを評価。「一緒に事業を伸ばしていける可能性を感じた」と説明した。婚活サービス会社が商品企画などで旅行会社と協業するケースはこれまでにも数多く見られたが、旅行会社を子会社化して事業に本格参入したケースは初めてと見られる。

社屋前で。左から中本氏、阿部氏  かもめの前社長で、現在は顧問を務める阿部英寿氏によれば、今回の「ご縁」は将来の業務拡大に向けた他業種との協業を模索するなかで、銀行から紹介されたもの。IBJについては「ライフデザインという考え方に惹かれるものがあり、方向性も一致している」と語った。かもめは1990年に設立。フィリピン、中南米、北米、北欧、パプアニューギニアへのツアー商品などのBtoC販売や、大手旅行会社へのホールセールなどをおこなっており、グループの2016年3月期の売上高は36億990万4000円、純利益は4879万5000円と好調な状態にある。

 中本氏は今後の商品開発の方針については、「婚活を前面に押し出すのではなく、自然な環境で価値観の合う人を見つけられるような商品を作りたい」と説明。また、出会いの場を演出するツアーに限らず「同性の友達を作るための、趣味性の高い旅行商品やイベントなど」にも取り組む意欲を示した。今後は社内に専門部署を立ち上げて検討を進め、新たな商品ブランドの立ち上げも視野に入れる。「かもめツアー」など既存のパッケージツアーブランドや、ホールセール事業については従来通り継続する。

 販売に際しては「IBJの強みの1つ」である直営店での対面コンサルティング時における提案、ウェブサイトへのバナー掲出、傘下のウインドアンドサンが発行する結婚情報誌への広告出稿などにより、会員へのアプローチをはかる。直営店での商品提案をIBJのコンサルタントがおこなうか、かもめから派遣したスタッフがおこなうかなどの細部についてはこれから検討するが、すでにかもめの子会社化を知った成婚カップルから旅行商品の提案を求める声も挙がっていることから、早急に対応を進めるという。

 なお、ハネムーン用の商品などについては、ハワイやグアム、ゴールドコーストなど、かもめが得意とする地域以外の取り扱いもカギとなるため、当面は大手旅行会社との協力についても模索する考え。一方、かもめが得意とするフィリピンなどについては現地のサプライヤーと協力して、これまでは注力できていなかったリゾートウェディングなどを強化するという。

※訂正案内(編集部 2017年1月11日15時15分)
・訂正箇所:第2段落第2文
誤:・・・当期純利益76億4000万円となる見込み。

正:・・・当期純利益7億6400万円となる見込み。