新春トップインタビュー:観光庁長官 田村明比古氏

17年は「観光先進国」に向けて本格始動
日本の旅行業界も「変わるべき」

 2016年は、政府が新たに「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定して「観光先進国」をめざすとともに、年間訪日外国人旅行者数が初めて2000万人を突破するなど、訪日旅行にとっては節目となる年となった。今後は「量」だけではなく「質」の成長が求められるなか、行政面での旗振り役を担う観光庁はどのような取り組みを進めるのか。長官の田村明比古氏に16年を振り返っていただくとともに、17年以降の展望を伺った。


―16年は日本の観光業にとってどのような1年でしたか

田村明比古氏(以下敬称略) 訪日旅行については初めて訪問者数が2000万人を超え、年間では2400万人前後になると見込まれる。伸び率は前年比47.1%増を記録した昨年ほどではないが、11月までの累計は22.4%増と、堅調に推移した1年だったといえる。

 消費に関しては質的な変化が見られた。例えば、中国人旅行者は15年のように高級ブランド品を購入することは減ったが、化粧品や医薬品などの売れ行きは良く、消費に占める飲食費の割合も高くなってきた。他の国の旅行者も含め、消費のスタイルが徐々に「買い物型」から「体験型」に変わりつつある。

 国内旅行については、4月の熊本地震と10月の鳥取中部地震、8月に北海道に上陸した複数の台風などの影響があった。また、北海道新幹線の開通に北陸新幹線ほどのインパクトがなかったり、シルバーウィークの日並びが悪かったりしたので、旅行者数は前年比では横這いか微減になると思う。

 海外旅行は、15年よりは増えている。特に低迷していた韓国と中国が底を打ち、ともにかなり回復した。ヨーロッパは度重なるテロ事件などの影響により苦戦しているものの、その分ハワイやオーストラリアへの旅行者が増加しているので、旅行者に選ばれるデスティネーションに変化があったということだろう。いずれにせよ、全体として回復傾向にあるのは歓迎すべきことだ。


―昨年に政府が策定した観光ビジョンでは、「観光立国」改め「観光先進国」に向けて、さらに高い目標が立てられました

田村 「観光ビジョン」は、政府を挙げてかなり思い切ったことをおこなっていく覚悟を示したものだ。以前から述べているが、20年の年間4000万人などの目標達成は何もしなければ厳しく、ビジョンで定めた施策を政府または官民一体で着実に進めてこそ達成し得る。取り組みは16年から始まっているが、17年は掲げられた施策を本格的に実行に移す年になる。