旅行業が求める人材とは?JATAが学生向けセミナー、EXPO会場で

人材確保に向け旅行業の現状を説明
若手社員によるディスカッションも

セミナーには約250名の学生が出席した  日本旅行業協会(JATA)は先ごろ、ツーリズムEXPOジャパン2016の会場で、旅行業に興味を持つ学生を対象とした「旅行業界研究セミナー」を開催した。現在の旅行業では、観光について勉強する学校は多くあるものの、実際に旅行会社への就職を希望する学生は少数に留まるなど、人材確保が喫緊の課題となっているところ。旅行業に興味を持つ学生に正しい情報を知ってもらい、より目標意識の高い学生を呼び込むことを目的に、今年のセミナーでは旅行業界の現状の説明や若手旅行会社社員によるパネルディスカッションがおこなわれた。

経営者が求める人材
「未来を見抜く力」が重要

東氏  セミナーでは第1部として、沖縄ツーリスト会長の東良和氏が「旅行会社経営者から見た求める人材」、イギリスのサリー大学文学・人文学部学部長で和歌山大学特別主幹教授・国際観光学研究センター副センター長も務めるグレアム・ミラー氏が「これからは観光の時代」、JATA広報室長の矢嶋敏朗氏が「入社試験を受けようと思うけど・・・旅行業界の現状はどうなの?」をテーマにプレゼンテーションを実施。第2部では「若手社員が語る旅行業の業務、遣り甲斐、大変な事」をテーマに、旅行会社の若手社員によるパネルディスカッションをおこなった。

 「旅行会社経営者から見た求める人材」について東氏はまず、現在の旅行会社が取り扱うサービスとして、日本人が日本国内を旅行する国内旅行、日本人が海外を旅行する海外旅行、外国人が日本を旅行する訪日旅行の3種類あることを説明。しかし、2020年の観光における消費額で、日本人による国内旅行は21兆円、海外旅行は2兆4156億円、訪日旅行は8兆円なのに対し、外国人による「第3国旅行」は171兆円に上ることを述べ、「今後は『ここ(第3国旅行)を取りに行く』という気構えが重要」と話した。

 第3国旅行について、東氏は「日本の旅行会社とあまり関係ないと思うかもしれないが、自動車メーカーのトヨタが北米で生産した車を近隣のカナダ、アメリカ、メキシコなどで販売することと同じ」と説明。今の日本では、訪日旅行が盛り上がっているものの、「21世紀最大の産業と言われている観光業において、一役を担う旅行業がこの波に乗れるかは各社の戦略などによって変わる。個々の会社や社員が、旅行業がどのように成長していくかを見抜くことが重要」と話した。

 これらを踏まえ、今後の求める人材像について「個人の意見としては、自分自身が未来の当事者として物事を考えられる人」とコメント。また、相手の立場になって考えることや、複数の仕事をストレスなくこなすことも大切であると話し、「現在は近隣のアジアの国が成長しているが、それを『日本が負けた』などと考えずに、相手と同じ立場になって(どのように成長していくか)考えることが大切」と意見を述べた。