旅行業・観光業DX・IT化支援サービス
旅行業・観光業DX・IT化支援サービス

JTB、18年までの新中計発表、仕入強化、訪日拡大へ

  • 2016年5月29日

JTB代表取締役社長の高橋氏  ジェイティービー(JTB)は5月27日、2016年度から18年度までの中期経営計画「躍進2018計画」を発表した。「訪日インバウンド」「仕入改革」「事業開発」の3点を重点推進テーマとして、経営資源を集中的に投下していく。18年度の目標として、売上高で15年度比3.7%増の1兆3940億円、営業利益で114.3%増の345億円、経常利益で62.9%増の364億円、当期純利益で67.5%の211億円をめざす。

 同日開催した記者会見で、JTB代表取締役社長の高橋広行氏(※高ははしご高)は「仕入れを制するものが営業を制する。仕入れができなければ、商品企画も営業もできない」と語り、仕入れを強化することで、他社との競争力を更に高めたい考えを示した。同氏は訪日外国人旅行者の増加により、国内の宿泊施設やバスの仕入れが厳しくなっている現状を説明。海外においても、日本人の海外旅行者数が減少する中で「日本のプレゼンスが低下し、ホテルや航空座席の仕入れが厳しくなってきた」という。

 こうした仕入環境の変化に対応するため、JTBでは航空座席やバスの座席、客室の買い取りや、航空機のチャーターなどを積極的におこなう方針。具体的には、テロ事件の影響がない欧州地域や、日本からの直行便が未就航の地域へのチャーター便の運航、同社が重要なデスティネーションと位置づけるハワイの航空座席の買い取りなどをおこなう。高橋氏は「自らリスクを取り、ハイリスク・ハイリターン型の仕入れにしていきたい」と語った。

 訪日事業については、政府が掲げる20年の訪日外国人旅行者数4000万人、30年6000万人の目標を踏まえ、訪日対応を強化。今年の4月に本社に「訪日インバウンドビジネス推進部」を設置し、グループ全体で事業を推進していく。15年度の訪日外国人旅行者数に占めるJTBのシェアは約15%だが、将来的には20%をねらう。

 まずは「主戦市場」と位置づけるアジアに注力していく方針で、現地の旅行会社との提携販売などで販売ネットワークの強化をはかる。さらに、国ごとのニーズに適した戦略を推進するとともに、訪日FITへの対応強化をはかり、訪日旅行オンライン予約サイト「JAPANiCAN(ジャパニカン)」の多言語化など、インターネット販売の拡大にも注力する。

 加えて、日本到着後の訪日外国人旅行者に向けた取り組みを強化。着地型商品の造成を更に進めるとともに、観光案内所「ツーリストインフォメーションセンター」の増設などで、訪日外国人旅行者とコミュニケーションを取る場を増やしていく。東北地域への誘客促進もはかる方針で、高橋氏は「北海道新幹線の開通を大きなきっかけにしたい」と意気込みを示した。このほか、事業開発では、旅行業界以外の他業種との協業などで、新しいビジネスモデルの構築をめざすとした。

 新しい中期経営計画では、地域交流事業による地域の活性化や、グローバル事業の確立、MICEやスポーツビジネスへの本格的な参入にも取り組む。地域交流事業では、DMC戦略を継続するとともに、政府がおこなう広域観光周遊ルートや日本版DMOの確立などの地方創生策と連動し、地域資源を活用した着地型商品の開発や販売を強化。九州の復興支援にも取り組む。

 グローバル事業では、海外発海外の需要の取り組みを強化。高橋氏は「利益の伸び幅が大きい事業」と説明。「グローバル事業における営業利益のシェアを25%まで高めたい」と意欲を示した。アジア地域を主なターゲットに、海外企業のM&Aによる海外ネットワークの拡大や、「日本」を切り口にしたJTBブランドの認知度の向上をめざす。

 このほか、MICEやスポーツビジネスに本格的に参入する。MICEについては、今年の4月に首都圏の法人事業を統合した新会社「JTBコミュニケーションデザイン」を設立。スポーツビジネスにおいては、東京五輪のオフィシャル旅行サービスパートナーとして契約しており、19年のラグビーワールドカップなども踏まえ、スポーツをきっかけとした旅行の取扱増をめざす。高橋氏は「大型イベントの参加者に日本の各地域を観光してもらえるように注力していきたい」と話した。