東京第1種の海外移住旅行社が破産、ブラジル旅行老舗

  • 2016年5月15日

 東京商工リサーチ(TSR)によると、東京都の第1種旅行業者の海外移住旅行社が4月26日、東京地方裁判所から破産開始決定を受けた。負債総額は調査中。1885年に創業した海外興業を前身とする、ブラジル旅行やサッカー留学などを強みとする老舗旅行会社だった。

 海外興業はブラジルなどへの海外移住を扱う旅行業者として設立し、各種手続きの代行業務を手がけた。その後、両国間の移住協定の締結に伴い同社は閉鎖し、1958年10月に海外移住旅行社が事業を引き継ぐ形で設立。査証申請代行業務のほか、近年はブラジルを中心に南米へのツアーや留学などを取り扱ってきた。

 1996年には第1種旅行業を取得し、「KIRツアー」のブランド名で、南米への企画旅行やブラジルへのサッカー留学手配などを実施。ピーク時の2005年9月期には41億2000万円の売上高を計上していた。

 しかしその後は、ブラジル人向けの航空券予約サイトへの投資や、12年7月のサンパウロ支店の開設などで負担が増加。リーマンショック以降の円高により、為替デリバティブ取引による損失を計上をしていたこともあり、経営状態が悪化した。また、11年の東日本大震災発生後には国内の外国人求人数が減少したことなども、追い打ちをかけたという。

 14年にはブラジルでのサッカーワールドカップに期待をかけたが、円安により売上高は伸びず、同年9月期は16億1153万円にまで減少。財務面に課題を残し、将来の見通しが厳しくなったことから、15年10月には事業を停止して日本旅行業協会(JATA)からも脱退し、今回の措置に至った。

 なお、同社は15年7月に名古屋支店が別会社を設立し、「KIRツアー」のブランドを継承。事業停止に伴う顧客への被害はないという。