新たに「受注型BtoB約款」、上限超える取消料が可能に

  • 2016年5月10日

 日本旅行業協会(JATA)によればこのほど、企業の団体旅行など事業者を相手とする受注型企画旅行について、契約する事業者との特約により標準旅行業約款の取消料表の上限を超える取消料を設定することができる旅行業約款(受注型BtoB約款)が、観光庁への個別申請により認可されることとなった。標準約款では、消費者保護の観点から取消料表の上限を超える特約は認められていないが、相手方が事業者である場合は消費者と異なり旅行業者との情報力や交渉力の格差はないと考え、定率や定額などの方法で取消料を設定できるようにする。

 適用対象となるのは、事業者との間で締結する受注型企画旅行契約で、企業の招待旅行や懸賞旅行などが該当。旅行業者と旅行契約者による事業者間契約となるため、取消料の特約が認められることとなる。旅行業者は契約する事業者には旅程保証債務を負い、旅行の参加者には手配債務、旅程管理債務、特別補償債務、安全確保債務を負うこととなる。

 受注型BtoB約款では特約による取消料を設定することが可能になるほか、一昨年に導入された受注型実額精算約款では必要とされている証憑書類の添付も不要とする。ただし旅行の参加者である個人が標準約款の取消料表を超える取消料を負担することになる場合は、消費者保護の観点から原則として合意は無効とする。

 各社による申請は7月1日から可能。認可を受けた場合、従来は「募集型企画旅行契約の部」「受注型企画旅行契約の部」など5部で構成されていた各社の約款に「事業者を相手方とする受注型企画旅行契約の部」が新設されて、全6部の構成となる。

 変更補償金については各社の約款の「受注型企画旅行契約の部」の別表に基づき計算した額を事業者に支払う。また、招待旅行に全額自己負担で参加する同行者については受注型BtoB契約とは分けて、別の募集型・受注型企画旅行契約として締結し、同行者が事業者の従業員である場合など特別なケースに限り受注型BtoB契約に含める。これらの詳細についてJATAと全国旅行業協会(ANTA)は、6月3日と14日に東京、6日に大阪で説明会を開催する予定。

 今回の受注型BtoB約款の導入はJATAと観光庁による検討の上で決定されたもの。標準旅行業約款における企画旅行の取消料規定については、多重予約などによるキャンセルの多さなどを受け、旅行業界から見直しが要望されており、昨年には募集型企画旅行でPEX運賃などの取消料や違約料を反映した取消料設定を可能にする「募集型ペックス約款」などが、一昨年にはサプライヤーが旅行業者に課す取消料や違約料の実額の合計以内の額を旅行取消料にできる「受注型実額精算約款」が導入されている。