豪州、MICEにも食と海、アデレードとメルボルンの魅力
座席増を追い風に
フード&ワインと「沿岸部」、そして「新しさ」
座席供給量の増加などにより日本からの需要が好調なオーストラリア。昨年12月には隔年開催のインセンティブ専門のトレードショー「ドリームタイム」がおこなわれ、MICEの中でも特にインセンティブグループの獲得増に意欲が示された。オーストラリアは、送客側の事情として他デスティネーションでの需要減退をカバーする役割も期待されるところ。合わせて実施されたアデレードとメルボルンでの視察も含め、ドリームタイムの様子を伝える。
▽FSC新路線で需要獲得に期待、イメージ刷新めざす
オーストラリアへの日本人旅行者数は、2015年1月から9月までは累計で前年を下回っていたが11月と12月には2桁増を記録し、通年では2.8%増の33万5200人とプラス成長に転じた。この背景には、いうまでもなくカンタス航空(QF)が羽田/シドニー線と成田/ブリスベン線に就航し、全日空(NH)も羽田/シドニー線を開設したことがある。
本誌取材に応じたオーストラリア政府観光局(TA)副最高経営責任者のフランシス・アン・キーラー氏は、フルサービスキャリア(FSC)が好まれるインセンティブなどの受注に繋げなければならないと言及。課題として「日本市場では、オーストラリアは知っている、行ったことがあると思われてしまっている」と指摘した。
この課題解決に向けては、近年力を入れているフード&ワインや2016年のテーマである海岸など沿岸部の体験(コースタル・エクスペリエンス)を、「新しさ」をキーワードとして打ち出していきたい考えだ。
また、日本市場で多い小規模のインセンティブグループに対して、ハイエンドの体験や素材をオーダーメイドして提供できる点を訴えたいといい、会期中もアデレードでは植物園での昼食やワイルドライフパークでのアフタヌーンティー、おしゃれな街の一角を貸しきっての朝食など、ニーズに合わせて場所や内容をアレンジできることが示された。
新路線には、各州・地域のMICEプロモーション担当者も大きな期待を寄せる。オーストラリアはもともと1990年代にはケアンズだけでボーイングB747型機が1日4便も飛んでいた過去があり、先述のキーラー氏の発言はそれを踏まえたもの。例えばサンシャインコーストでは、往時はゴルフ需要などで賑わったものの現在はほとんど認知度を失ってしまっているとの分析で、アクセスの改善を受けて「新しいデスティネーション」として改めて誘客に力を入れていく方針だ。
また、「新しさ」の例としては、ゴールドコーストで今年5月にビーチフロントのテラスが完成予定でレセプションなどの会場として利用できるようになるほか、トラムの拡充やショッピングセンター、空港の改装なども予定されているところで、シドニーでもコンベンションセンターが年末までに開業予定だ。
このほか、ケアンズも隠れ家的なリゾートとしてポートダグラスをアピールしていきたい考えで、オーストラリアで唯一カカオの実から栽培して作るというチョコレートや、コーヒーのブレンディングやテイスティングなど同地ならではの素材も紹介していく。