ニセコ町、インバウンドの取り組みとMICEの可能性

民と官が一体となり訪日外国人MICEに注力

尻別川でのラフティングは夏のニセコの代表的なアクティビティのひとつ
(写真提供NAC - Niseko Adventure Center)

 猫も杓子も「インバウンド」に目を向けようかという昨今。訪日外客数は驚異的な伸びを続け、2015年は9月までで1448万人となって過去最高であった昨年の累計の1341万人を超えた。こうしたなかで、10年以上前にオーストラリアからの訪問者によって訪日旅行促進の道がひらかれた北海道のニセコ町も、さらなる飛躍に向けてさまざまな活動を展開しており、なかでも特に注力しているのがMICEだ。人口5000人弱の小さな町が取り組む訪日MICEとはどのようなものか。ヒルトンニセコビレッジ主催のFAMツアーから、現状や課題、可能性をレポートする。

目立つオーストラリアからの来訪、ニーズに合わせたピーアール戦略

 14年のニセコ町の宿泊客数は159万人。従来は道内からの訪問が多かったが、初めて道外からの旅行者が上回った。このうち外国人は14万8000人で、04年と比較すると約10倍に伸びている。特徴的なのはオーストラリア人の比率が多いことで、1位こそ2万9000人の香港に譲るが、オーストラリアは2万2000人で2位につけ、以降が台湾の1万9000人、中国の1万7000人、韓国の1万3000人と続く。

夏場はゴルフ目当ての訪日客も多く、早朝にはゴルフカートがホテル前に並ぶ

 もともとオーストラリア人とニセコの関わりは古く、03年頃にはオーストラリアのスキー愛好家などから、パウダースノーと呼ばれる雪質の良さや時差のない立地が口コミによって紹介され訪問者が急増。こうした経緯もあって、現在では英語でのスキーレッスンや、スキー場エリアの道路やホテルなどでの多言語表記など外国人対応も進んでいる。例えば、町内の飲食店の8割以上では英語と中国語(繁体字・簡体字)の表記が用意されているという。

 また、ニセコ町役場の商工観光課では4人の国際交流員が勤務。役場が発行しているニュースレターは英語・韓国語・中国語・ドイツ語と多言語対応しており、マーケットのニーズに合わせて写真や取り上げる内容を変えている。

 今後、日本全体で訪日旅行者の誘客競争がさらに激化していくことが予想されるが、今回のFAMツアーを主催したヒルトンニセコビレッジで総支配人を務める山邉知幸氏は、「20年まではまだまだ伸びる」と予測。現在は団体とFITが中心だが、MICE部門を強化していくことでさらなる成長をめざすという。

ニセコ町役場商工観光課のポール・ハガート氏

 もちろん町としてもMICE需要の取り込みに意欲的。ニセコ町役場商工観光会のポール・ハガード氏によると、今冬には1800人の季節雇用者が国内外から集まってニセコで働く見込みだが、課題は彼らがニセコについての知識を持っていない点。MICEをより多く獲得すればさらに長期間の雇用が可能となり、より深く地域を理解したスタッフが増えることで「地域としてのクオリティ・コントロールが可能になる」との考えだ。