政府、訪日旅行推進で新たな閣僚会議、年度末に長期ビジョン
政府は11月9日、訪日旅行推進のための新たな会議体として、内閣総理大臣の安倍晋三氏を議長とする閣僚級会議「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」の初回会合を首相官邸で開催した。同会議については、内閣官房長官の菅義偉氏が10月23日の記者会見で開設の意向を表明。今後は年度末までに計3回の会合を開催し、訪日外国人旅行者のさらなる増加や地方への誘客などをはかるための体制整備に向けた新たなビジョンを策定する。
安倍内閣では現在、安倍氏が主催し全閣僚で短期的な方針を決定するための「観光立国推進閣僚会議」を数度に渡り開催しているところ。同会議については今後も継続するが、新たな会議では年間の訪日外国人旅行者数2000万人の達成後を見据えた、中長期的な施策について検討する考え。
会議の冒頭で挨拶した安倍氏は「わが国は豊かな観光資源に恵まれ、成長著しいアジア諸国の近隣に位置し、観光立国の大きなポテンシャルを有しているが、課題も多くある」と述べた上で「世界中からのお客様の声にしっかり耳を傾け、課題に向き合い、新しい旅行者とリピーターを増やしていかなければならない」と強調。「地方」と「消費」をキーワードに「しっかりとしたビジョンと、次なるステージのロードマップ」を示すことができるよう、構成員に呼びかけた。
同会議では議長の安倍氏を補佐する副議長として、菅氏と国土交通大臣の石井啓一氏の2名が就任。そのほかの構成員には副総理兼財務大臣の麻生太郎氏、地方創生担当大臣の石破茂氏、一億総活躍担当大臣の加藤勝信氏、総務大臣の高市早苗氏、法務大臣の岩城光英氏、外務大臣の岸田文雄氏、厚生労働大臣の塩崎恭久氏、経済産業大臣の林幹雄氏が名を連ねる。民間からは旅行ガイド出版社の石井兄弟社で社長を務める石井至氏、ピーチ・アビエーション(MM)代表取締役CEOの井上慎一氏、鶴雅グループ代表の大西雅之氏、加賀屋の女将の小田真弓氏、九州旅客鉄道(JR九州)会長の唐池恒二氏、小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏、関西国際大学客員教授の李容淑氏が参加する。
会議終了後には、観光庁長官の田村明比古氏がブリーフィングを実施。観光庁によれば、麻生氏は空港や港湾などにおける税関対応の強化、石破氏は日本版DMOの組織形成の支援、加藤氏は高齢者や若者の活用、高市氏はテレビや動画などの放送コンテンツの活用、岩城氏は入国審査の効率化や高度化、岸田氏の代理で出席した外務副大臣の武藤容治氏は戦略的なビザ取得要件の緩和、塩崎氏は検疫体制の強化や民泊への対応、林氏は地域での消費増などについて意欲を示したという。
同会議では下部組織として、年内にも菅氏と石井氏、関係各省の局長などからなるワーキンググループを1組設け、具体的な議論を開始する予定。同グループにおける議論の内容を受けて、「構想会議」は早ければ年明けにも第2回の会合を開催し、3月の第3回会合で中長期ビジョンの取りまとめをおこなう。新たに策定したビジョンは、毎年改定されている「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」などに反映される見通し。また、今後の予算編成などにも影響を及ぼすと考えられる。