インタビュー:JTBワールドバケーションズ添乗員の磯部正春氏

  • 2015年9月17日

 1977年に入社以来、38年間JTB一筋で添乗員を務めてきた、JTBワールドバケーションズ グランドマスターコンダクターの磯部正春氏。添乗回数は7358回(2015年8月末現在)にのぼり、07年に同社が実施した日本初のクロアチアチャーターの際は、現地に先乗りしてスムーズなオペレーション体制を構築し、日本発チャーターの促進に多大な貢献をしたとして、ツアーコンダクター・オブ・ザ・イヤー2008の準グランプリを受賞した。今年4月には観光関係功労者国土交通大臣表彰も受賞した同氏に、添乗業務の際に心がけていることや若手へのアドバイスを聞いた。


添乗員に興味を持たれたきっかけを教えて下さい

磯部正春氏(以下敬称略) 私がこの仕事についた当時は海外旅行が一般化し、羽田にたくさんのお客様が詰めかけていた時代です。ハワイ旅行に行く友人を見送りに羽田空港に行った時、タラップから飛行機に乗り込む友人の姿を見て、絶対に飛行機に乗りたい、いつかは飛行機に乗って逆に誰かに見送ってもらえる立場になりたい、と思ったことが、海外に行きたいと思った最初のきっかけです。

 また、近所に当時の日本通運の添乗員の方がいたのも理由の1つです。その方にお話を伺った際、初めて添乗員という職業があることを認識しました。その後、旅行専門学校の夜間部に通い、ルック専任コンダクターの募集に応募してみたところ、採用していただきました。


添乗業務でお客様と接する際、心がけていることは

磯部 最も気をつけているのは、お客様と対面で話す時です。お客様の顔を見れば、なんとなく何を欲しているのか、理解して聞いているのか、興味を持っているのかということがわかります。

 お客様によって、買い物や観光、歴史など、興味の対象はさまざまです。全員に100%満足していただくのは難しいですが、お客様の顔を見て話していると、何に興味があるかは2、3日経過するとわかってきます。旅の本質は、見聞を広め、楽しく過ごし、帰ってきた時に何か収穫を得ていること。お客様が最も興味を持つところを把握しながら説明して、最後はお客様の心が豊かになって帰っていただきたいと思っています。

 例えば春休みや夏休みでツアーの参加者に学校の先生が多い場合は、現地の教育関係のお話のボリュームを多くするなどの工夫はしています。また、大学生の場合は現地の初任給や就職活動について、新婚の方々には現地の結婚式の話をします。

 お客様はガイドブックに書いてあるものではなく、そういう現地の情報を知りたいと思います。今はお客様の方がガイドブックやインターネットなどで色々な情報をご存知ですが、そうしたツールでは得られない情報を、普段から現地の人々と話すことで収集しています。休憩時間にガイドやドライバーと話し、その人の生活環境などを聞くと、お客様に話す材料の1つになります。

 また、いろいろ説明する際は、ツアーのポイントとなる要点を抑えています。その土地のハイライトとなる部分、例えば世界遺産や、お客様がそのツアーを選択した最大の理由となる部分がある時は、早めに情報を提供して楽しんでいただくようにしています。ツアーのハイライトは年に2回ある商品説明会で、手配担当者の話で知ることはありますが、すべてのツアーを熟知するのは難しいです。そういう時はパンフレットを見ます。パンフレットの写真や、文章で強調されているところなどをお客様と同じ目線で見ると、ツアーのポイントはわかります。

 そのほかには、自分の後ろ姿にも気をつけています。私自身もお客様の後ろ姿を見ていると、この方はちょっと疲れているかな、といったことが分かります。添乗員は皆様の先頭を歩く機会が多いので、後ろ姿を見てもらうときはダラダラ歩かず、しっかりと歩いています。

 添乗員の雰囲気はお客様に伝わると思います。例えば時間を非常に気にしながら、1分たりとも遅れてはいけないというような、そうした動き方しているとお客様には伝わります。私は、キビキビしすぎるのは旅ではあまりふさわしくないと思います。お客様にはのんびりしていただくのが基本です。ただ、遅れてはいけない時はお客様が見えるところで走ったり、いつもと違うことがわかるように行動で示すことはあります。