オーストラリア復活へ、JATA田川会長「最低でも50万人」
日本旅行業協会(JATA)会長の田川博己氏は9月10日、オーストラリア政府観光局(TA)が開催したセミナー&ワークショップ「ウォークアバウト・ジャパン(Walkabout Japan)2015」の東京会場を訪れて記者会見を開催し、オーストラリア市場の拡大に向けた課題や今後の取り組みの方向性を語った。
オーストラリアへの日本人訪問者数は30万人強の規模で推移しているが、田川氏はかつては100万人をめざした時代もあったなかで現在は「ベーシックな数字」であり、「最低でも50万人くらいは行っていい」と指摘。TA日本局長のアンドリュー・ライリー氏も、現状の訪問者数は微減となっているが、「9月からはプラス成長に転じ、来年1月以降は2桁増となる」と期待を語った。
オーストラリアからのミッション団は州やサプライヤーごとには毎年来日していたものの、オーストラリア全体では4年ぶり。この背景には、需要拡大に向けて大きな要因となる座席供給量の拡大がある。
日豪間では、カンタス航空(QF)が8月1日から羽田/シドニー線と成田/ブリスベン線に就航したほか、全日空(NH)も12月11日から羽田/シドニー線の復便を計画。好調なインバウンド需要を当て込んだものではあるが、海外旅行で利用可能な座席が増えることには変わりなく、ライリー氏が示した見通しもこの状況を念頭に置いたものだ。また、航空座席以外でも直近では為替レートも円高傾向になっているという。
こうした追い風を実際の訪問者の伸びに繋げることが課題となるが、田川氏は売れてきたものをただ作り続けるのではなく、いわゆる「プロダクトアウト」型の商品展開が重要になると分析。海外旅行市場全体が低迷しているなかで、「なぜ行くべきか」を提案することが必要であり「魅力を再構成」して商品力を高める努力が求められると語った。
その上で田川氏は、例として欧州やハワイでは先行しているシニア向けの長期滞在型の旅行を提示。例えば10泊以上してそのうちの2泊はニュージーランドに行くなど、滞在中の過ごし方を具体的に打ち出していくべきとの考えだ。12月にはJATAの理事会をオーストラリアで開催することが決まっているという。
また、ライリー氏も「観る(see)」だけの旅行から「する(do)」旅行への変革を進めたいと語り、そうした情報の発信を強化すべくウェブサイトのリニューアルを計画していると説明した。
▽全日空「二度と撤退しない」、JTBワールドバケーションズは送客倍増めざす
10日夜のレセプションで挨拶に立ったNH常務取締役執行役員の志岐隆史氏は、NHが1999年まではシドニーに就航していたことに触れた上で「もう二度と撤退はしない」と言及し、集まった旅行会社に対して販売を呼びかけた。
また、JTBワールドバケーションズ代表取締役社長の井上聡氏も挨拶し、座席供給量の拡大は「最大の好機」であると強調。オーストラリアへの送客数を「1.5倍、2倍にしたい」と意欲を示した。
なお、このほかレセプション会場内では、TA本局でアジア市場及び戦略的提携担当のジェネラルマネージャーを務めるティム・ジョーンズ氏が本誌取材に応じ、昨今のアジア圏からの旅行者急増に続いて日本市場でもブームが起きる可能性は十分にあると期待を表明した。