インタビュー:ジャパングレイス取締役の山本隆氏

ピースボートの世界一周クルーズで多様な需要に対応
短期間クルーズで需要創出、他社への卸売検討も

 NGO「ピースボート」のツアーを主催旅行会社として展開しているジャパングレイス。「地球一周の船旅」に加え、今年は日本発着のショートクルーズを春に初めて実施するなど、新たな取り組みもおこなっている。外国船による日本発着クルーズの増加で、日本のクルーズ市場の拡大が期待されるなか、今後ピースボートとともにクルーズをどのように展開していくのか。同社取締役の山本隆氏に聞いた。

-NGOのピースボートと貴社の関わりを教えてください

山本隆氏(以下敬称略) ピースボートは、1983年から国際交流をテーマにクルーズを企画していた。弊社では95年からピースボートのクルーズツアーの主催、販売をおこなっている。クルーズの航路や訪問先はピースボートと相談して決定している。

 98年からは客船を年間でチャーターし、世界一周クルーズを年3回、4月、9月、12月出発で実施している。春は北半球や欧州が中心で、最近では北欧が多い。夏は欧州と南米で、北半球と南半球を訪問する。冬は南半球を周遊している。チャーターしている客船は数年に1度変更しており、今はプルマントゥール・クルーズの「オーシャンドリーム」を利用している。3万5265トンの船で、乗客定員は1422名だ。

 ジャパングレイスの設立は69年。当初は他のツアーも扱っていたが、今はほぼピースボートのクルーズ1本に絞っている。ピースボートのクルーズは、世界一周という商品の特性もありかなり特殊なもの。船内の運営も我々が担当しているところもあり、他のツアーよりもピースボートのクルーズに集中したほうが、会社としての特性も出やすいと考えた。


ピースボートのクルーズにはどういった方が参加されるのですか

山本 基本的なマーケティングを日本でしかおこなっていないこともあり、9割以上は日本人のお客様となっている。ピースボートのクルーズには若者が参加しているというイメージがあるが、実際はシニア層が多く、時期にもよるが7割くらいが50代以上のお客様。10代、20代は2割から3割で、残りの1割が30代から40代の中間層だ。2000年前後までは若者と年配の方々が半々だったが、徐々に若者が減っていった。

 海外に行く若者は全体的に減っており、人口の問題やインターネットの影響などが一般的に挙げられているが、ピースボートのクルーズの場合は、就職問題も要因の1つだ。昔は契約社員で長期間働き、ある程度お金をためて世界一周クルーズに参加し、帰国後再就職するという若者もいたが、今は再就職に不安が残る。また、所得減や老後への不安などで親からの金銭的援助が少なくなり、旅行への参加が難しくなってきたのも一因だろう。

 若者を呼び込むためには、交流や体験といった曖昧な内容だけでなく、もう少し違う価値観を示していく必要があると考えている。経験が目に見えるキャリアになる、というような価値を、我々の船旅にはつけていかなければならないと考えている。参加者に提供できるものを、もう少し明確化することが非常に重要だと思う。

 また、我々のクルーズにはリピーターが多い。時期によるが、3割から4割がリピーターで、2回から3回乗る人が多い。ただし、次回が8回目の乗船というようなハードリピーターもいる。

 参加者の目的はさまざまだ。国際交流や災害支援、ボランティア活動などを目的に乗船するお客様は何割かいるが、単純に「世界一周をしてみたい」という人が多い。世界一周でできることの1つに国際交流が入る感じで、目的を1つに絞って参加する人は非常に少ない。ピースボートのクルーズに参加するのであれば、世界のことを考えなければならない、平和に対する意識が高くなければならない、というイメージを持っている人もいるかもしれないが、そういうことはない。