おもてなしはまず行動、プラスアルファのサービスでリピーター化を

  • 2015年2月24日

おもてなしは「想って成す」 顧客情報をサービスに活用
事業範囲の拡大も

 日本旅行協定旅館ホテル連盟が開催した第53回通常総会で、観光ビジネスコンサルタンツ代表取締役社長で観光コンサルタントの西川丈次氏は「偶然の出逢いを、必然のリピートに」と題した講演をおこなった。西川氏は8年の旅行会社勤務後、船井総合研究所で観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍、2009年に観光ビジネスコンサルタンツを立ち上げた。同氏の講演から、リピーター創出のヒントを探る。


おもてなしは「想って成す」
名前を鍵に顧客の心をつかむ

 西川氏はまず、満員電車の中で妊婦がいた場合、座席を譲ることができるか否かという例を挙げ、「困った人がいたら助けるようにとずっと教えられてきたが、本当にその場面にぶつかったときに実行できるのか」と問題を提起。「心ではわかっていても、『どうぞ』という一言がなかなか言えない」人もいるのではと話した。

 その上でおもてなしも同様だとし、「もてなす」という行為について「おもてなしは想って成すこと。想ったことを実行すること」と説明。相手に伝わらないのでは最初から無かったことと同じであると言い、「今目の前にいるお客様にこうしてあげたい、と想った瞬間にそういう行動を取ることが、お客様に一番喜んでもらえること。その勇気をぜひ持ってほしい」と参加者に呼びかけた。

 また、西川氏は米国百貨店のノードストロームの例を紹介。20年前に同百貨店を利用した時、購入した商品を袋に入れて渡してもらった時に「ありがとうございます、西川さん」と声をかけられて非常に感動したという。西川氏は「私を『お客様』という多数ではなく、“西川さん”という『個』で捉えた」ことが感動を呼んだと話し、「名前はお客様の心の扉を開く大きな武器」であると強調した。

 同氏は、顧客は宿泊施設でどのようなサービスを受けられるのか、不安な思いを抱いているとし、馴染みの客ならばある程度予測がつき、期待も持てるが初めての顧客は特に不安に思うのではと示唆。「お客様の硬い扉を1枚ずつ笑顔や接客で開いていき、全てが開いたらよい滞在ができた、またここに来たいと思う。その最初の扉を開くのが名前という鍵」と語った。

 また、東京でレストランなどを展開する「カシータ」の例も紹介。1年前に予約を入れ、キャンセルしたにもかかわらず次の予約の際に名前を呼ばれたことに感動を覚えたといい、「一度接点をいただいたお客様は、我々からは離さず繋ぎ続ける」ことの重要さを指摘した。

 こうした「名前を呼ぶ」という行為は手間がかかる。ノードストロームの場合、西川氏がクレジットカードで代金を支払ったため手元に名前の手がかりとなるローマ字はあったが、日本語では読み方がわからなかったのではないか。西川氏は対応したスタッフは何度も考えたはずであり、そうした手間をかけることこそがおもてなしであると語り「無駄の積み重ねがお客様を感動させ、リピーター化するサービスを作り出していく」点を強調。「無駄を徹底的に極めれば無駄ではなく感動になる」と話した。