激動の時代を乗り切る経営者とは-トラベル懇話会新春講演会

  • 2015年2月10日

予測できない将来を乗り切り
50年後に感謝されるために

 1月8日に開催されたトラベル懇話会の賀詞交歓会では、恒例の「新春講演会」がおこなわれ、今年は世界的なコンサルティング会社のボストンコンサルティンググループ(BCG)で日本代表を務める御立尚資氏が登壇した。御立氏は京都大学を卒業し、ハーバード大学で経営学修士を取得した後、日本航空(JL)経営企画部門などを経て同社に入社。現在は経済同友会の副代表幹事や国連世界食糧計画理事なども務める。今回は旅行会社経営者に向けた御立氏の講演「変化の時代とリーダーシップ」の要旨を紹介する。

旅行業界に追い風が
ただし外部リスクも多い

 ここ数年、訪日外国人旅行者は急激に増加している。そして日本は2020年に向けて、年間訪日外国人旅行者数2000万人をめざしている。その数はフランスなどに比べれば、まだまだ少ないかもしれない。しかしそれらの国々には隣国から陸路で気軽にやってくる旅行者も多く、空路と海路しか渡航手段のない島国の日本が、年間2000万人を達成できたなら、それは実質的には「世界一」と誇れることだと思う。また、最近では地域創生や休日の平準化に耳を傾けてくれる政治家も増えており、政府が訪日旅行だけでなく国内旅行も重視している兆候が見受けられる。2020年に向けて、旅行産業には追い風が吹いていると考えていいだろう。

 しかし世の中の変化は大きく、シナリオ通りには行かない。考えうるマイナスの局面に対して常に備えておかないと、積極的な投資はできないし追い風にも乗れない。企業の成長にはリスク管理能力が必要で、「ここまでのリスクであれば、最終的に自分の会社は生き残れる」と読み切れる経営者だけが、企業を成長させられる。米国の経営学者のL.C.メギンソンは、チャールズ・ダーウィンの「種の起源」を引用して、「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢明なものが生き残るのでもない。最も変化できるものが生き残るのだ」と唱えた。同じことが、ビジネスの世界にも当てはまる。

 現代は程度の差こそあるが、どの業界でも浮き沈みが激しい。企業間の競争以外にも、急激な人口変動や都市化、世界的な工業化、企業のグローバル化、地域紛争の増加、デジタル革命による産業構造の変化、金融市場の不安定さ、自然災害など、外部要因は非常に多い。リスクは増大し、影響も多様化して、被害が増加傾向にある。要するに現代は「下剋上の時代」といってよく、旅行業界も大きな影響を受けやすい。