JTB高橋社長、20年まで「黄金の時間」、総力挙げて計画遂行
ジェイティービー(JTB)代表取締役社長の高橋広行氏は1月22日、JTBの「2015年新春経営講演会」で挨拶に立ち、経営計画「2020年ビジョン」の目標達成に意欲を示すとともに、2015年以降の取組方針を説明した。2020年ビジョンは、2020年までにアジア圏内で「圧倒的No.1ポジション」を確立し「長期的・安定的な成長を可能とする基盤」を形成しようとするもの。
高橋氏は、同計画で掲げる数値目標の取扱額2兆円、営業利益400億円について「極めて高い目標。営業利益は現状のほぼ3倍」であるとし、「これまでと同じことをやっていたのでは達成はない」と強調。JTBが事業ドメインとして位置付ける交流文化事業をさらに推し進めていく考えを示した。
また、高橋氏は2020年までの期間について、訪日需要の拡大や国際交流人口の増加、東京オリンピック・パラリンピックの開催などを念頭に「様々なビジネスチャンスに満ち溢れた、いわば“黄金の時間”」であると表現。
ただし、「手を伸ばせば簡単に手に入れられるようなものではなく、何もしないで自然に輝くものではない」ともコメント。その上で、「グループ170社、2万6000名の総力を結集」し業界内外とも協力することで好機をものにし、JTBグループや旅行業界の成長に繋げるとともに、観光立国に貢献していきたいと語った。
▽2015年の旅行意欲は堅調、海外は中韓復活、国内は「鉄道」「宿泊4000億円」
JTBでは、2015年の市場見通しとして出国者数が前年比0.4%増の1700万人、国内旅行者数が1.0%増の2億9030万人、訪日旅行者数が13.0%増の1500万人になると予測しているところ。高橋氏は、日本人の旅行需要について「消費全般では節約志向が続くが、心を豊かにしたり充実した時間を過ごしたりする消費マインドは旺盛。旅行意欲も堅調に推移する」と分析する。
海外旅行では、燃油サーチャージがゼロになることが予測されており、まずはその点を「市場に対してしっかりと訴求していきたい」という。また、新たな切り口での商品展開や、チャーターやクルーズの仕掛けもおこなう。
さらに、「海外旅行復活の最大のポイント」は中国と韓国市場の回復と断言。両国との関係に改善の兆しが見えていることや、日韓の国交正常化50周年の節目であることなどを追い風として回復をめざす考えを示した。
一方、国内旅行では、まず北陸新幹線に触れ「これまでの国内旅行の人の流れを大きく変えるほどのインパクトがある」と期待。山陽新幹線の開業40周年や年明けには北海道新幹線開業も控えていることから、「今年は鉄道の年」との考えのもと、鉄道旅行の需要取り込みを進める考えだ。
また、高野山開創1200年や姫路城のリニューアルオープンなど「人流を生み出せる様々な素材が揃っている」とも指摘した。
加えて、国内旅行では「最も重視している」という宿泊販売において「悲願の(年間)4000億円にあと少しで手が届く」ところまで来ているといい、年度末までの2ヶ月でラストスパートをかけていくという。
絶好調の訪日では個人旅行化がさらに進むと予測。これに対してJTBとして、47都道府県すべてでデスティネーションマネジメント事業を展開する「47DMC戦略」のもと地域ごとの魅力掘り起こしと発信を強化するほか、日本人客を基準にした画一的サービスからの脱却や、ショッピングツーリズムやスポーツツーリズムなど新しい旅行形態への対応をリードしていく。
このほか、2015年度以降の事業展開のうち、グローバル戦略では、「日本発海外」から「海外発海外」への転換をさらに推進。JTBでは35ヶ国100都市に486拠点を構えているが、現状ではその多くが日本人海外旅行客の受けを業務としている。高橋氏によると、今後は多くの拠点で現地でのインバウンドとアウトバウンド両方を扱うように変化させていくという。
なお、JTBでは昨年、沖縄の国際物流拠点化を目的として開催された「沖縄大交易会」でバイヤーとセラーのマッチングを担当。これについて高橋氏は、「我々がめざす、旅行業の枠組みを越えた交流文化事業の成功例の一つ」と自信を示し、その上で「こうした取り組みを世界規模で展開し、グローバルベースでの交流文化事業の成功をめざす」と意欲を語った。