新春トップインタビュー:JATA会長 田川博己氏

2015年は「節目の年」、7月以降に勝負
海外・国内・訪日それぞれ対外発信強化

 2014年6月に日本旅行業協会(JATA)会長に就任した田川博己氏。2014年は低迷する海外旅行に絶好調の訪日旅行という対照的な1年間であったが、田川氏は就任以来、海外と訪日、国内の「三位一体」で観光立国を進める必要性を強く訴え続けている。2015年の市場をどのように展望しその中でどのように事業を進めるか。持ち前の発言力で旅行業界の内外に働きかけを続ける田川氏に聞いた。


-2014年の、特に会長に就任されてからの半年について振り返りをお聞かせください

田川博己氏(以下、敬称略) 海外、国内、訪日それぞれの分野で違いがはっきり出てきている。訪日については連日のように報道されている通りだが、逆に日本人が知らないところに外国人がたくさん行っているのを知ることで、国内旅行の需要が刺激されている側面もある。

 海外旅行は、確かに1700万人を割り込みそうな状況もあるが、根強さはある。どれほど悪くても1500万人、1600万人は海外旅行に行く。中国と韓国は政治的な部分で抑制されていて200万人強に減ってしまっているが、400万人規模に届くポテンシャルはある。復活に向けて、韓国は昨年12月に1000人規模のFAMツアーを実施し、中国でも双方の観光大臣が会談しているところだ。

 いずれにしても、これだけ円安になって格差が広がるともっと減ってもおかしくない中で1700万人前後で留まるというのは、潜在的に1600万人程度の需要はあるということだと思う。

 これらが半年前と今の違いだ。三位一体はそれぞれ融合してトータルで日本のツーリズムを上げていくという発想だが、そもそも全てが相互に関わっている。インバウンド対国内旅行、海外旅行対インバウンドといった対立構造は避けなければならず、その意味でそれぞれのマーケットの分析をしっかりしないといけない。


-2015年はどのような1年になるとお考えでしょうか

田川 選挙が12月にあったことも踏まえて、1月から3月は今の状況とあまり変わらないのではないかと読んでいる。また、新年度に入って4月から6月も状況が良くなる想定はできない。円安基調もそう簡単に変わるとは思えず、1ドル120円前後を行ったり来たりするのが数ヶ月は続くのではないか。

 原油については、燃油サーチャージの値下がりは確かに嬉しいことだが、経営環境として考えると正直にいって即効性はあまりない。半年後には電気料金のやガソリン代などに表れてくるかもしれないが、すぐに効果が出てくるとは思わない。

 こうしたことから、私は来年の勝負は7月以降だと思う。7月から12月の下期が一つの勝負どころだ。消費税増税の延期や、夏のボーナスあたりで出るはずの賃上げ効果も考えられる。