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アクセスランキング、1位は政策検討会、JTB田川氏ら業界の課題議論

[総評] 今週は、観光庁が9月10日に開催した、“観光産業政策検討会”の第1回会合についての記事が1位になりました。観光庁長官の井手憲文氏は会の冒頭の挨拶で、「世界最高レベル」の観光産業をめざすために必要な政策を議論してほしいと話されましたが、委員にもジェイティービー(JTB)の田川博己社長やトップツアーの百木田康二執行役員など観光産業の要職を担う方々が集まっており、実のある議論が期待されます。

 検討会はあと3回の会合を経て、2013年3月に提言書を取りまとめる予定です。第1回で課題として取り上げられた項目は記事をご覧いただきたいと思いますが、気になるのは“観光産業”が大変広範な業種にまたがる点です。

 委員の顔ぶれを見ても旅行、ホテル、旅館の関係者が名を連ねておりますが、旅行会社関係でいえばツアーオペレーター、添乗員派遣会社もありますし、運輸業も観光産業でしょう。また、遊園地など娯楽施設や土産物屋など小売・飲食店も含まれるはずです。

 こうした多様な業種を包括的に“観光産業”として捉え、課題解決に向けた政策の提言を取りまとめるのに3回の議論で十分なのかという不安を感じます。旅行業界の中だけでも複雑な課題が山積していますし、ホテルと旅館だけでも抱えている問題は異なるでしょう。

 これは、検討会にケチを付けたいわけではなく、個人的に強い期待を抱いていればこその懸念です。期待を持ったのは、第1回会合で歯に衣着せぬ意見が多く聞かれたためでした。例えば、供給超過となっている旅館は淘汰され、より良いサービスを提供する施設が残っていけば良い、という声もありましたし、何よりトップツアー百木田氏が指摘した、優秀な若手社員の確保に向けた課題が心に残っています。

 百木田氏は、ご自身が人事労務を担当される中で実感していることとして、「この数年の傾向を見る限り、この業界に若者が入ってこない、もしくは早期で退職していく理由は、長時間労働、賃金、将来の不安。これを変えていかない限りは優秀な人材の確保はままならない」と話されました。

 「この仕事は好きだし、やりがいもあるけど…」と辞めていく若手社員がいかに多いか、読者の皆様も実感されているのではないでしょうか。これは旅行会社に限った話ではなく、私がホテルでベルマンとして勤務していた際にも強く感じていたものです。

 たまたまかも知れませんが、これまでの取材の中で経営幹部がこの点に言及したのを見聞きしたのはこれが初めてであり、そうであればこそ検討会の今後の議論にも期待が高まりました。百木田氏は、この課題解決に向けて、業界自体の魅力を向上していかなければならないと発言されていましたが、諸手を上げて賛成です。

 ただ、個人的には、日本のサービス文化を考えると、なかなか地位向上は容易ではないと感じています。例えば何かを無料で提供する時に「こちらはサービスでございます」という言葉がよく使われていますが、本来の英語は“complimentary”です。

 サービス業の“サービス”が無料という意味で使われている時点で、業種としての構造的な欠陥を感じてしまいますが、“自己犠牲精神”など、日本人のメンタリティに根付いてしまっている部分を変えるのは容易ではありません。

 とはいえ、旅行業界、あるいは観光産業全体の魅力を引き上げるには、社会的な評価と給与の両面で改善が必要です。周囲から尊敬されずとも引け目を感じることはなく、ある程度はゆとりを持った人生設計が可能で、自信を持って働くことができなければ、魅力ある業界、産業とはいえないでしょう。

 このような、サービス文化など業界外の環境的な要因も踏まえて検討会で議論が重ねられることで、来年3月に、ほんのわずかでも前に進める提言がなされるよう心から期待しています。(松本)


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(2012年9月第3週:9月9日0時~9月14日19時)
第1位
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