トップインタビュー:ピーチ代表取締役CEOの井上慎一氏
潜在需要の開拓順調
まずは「LCCとして一人前」めざす
3月に運航を開始し、順調に路線網を拡充しているピーチ・アビエーション(MM)。社名だけでなく、同社代表取締役CEOの井上慎一氏が「花が咲いたような」と表現した機体デザインなど、従来の日本の航空会社とは一線を画す路線で広く注目を集めた。しかし、LCCビジネスの運営自体は「手探り」であり、経験の面では海外での素地があるエアアジア・ジャパン(JW)、ジェットスター・ジャパン(GK)に水をあけられている。“日系LCC”の先駆けを自任するMMが、フルサービスキャリアも含めた競争をどのように勝ち抜き、成長していくか。就航以来の振り返りとともに井上氏に聞いた。
-「日本初の本格的LCC」を自負されていますが、MMにとってのLCCビジネスとはどのようなものでしょうか
井上慎一氏(以下、敬称略) 我々はあくまでもLCCの原理主義的なモデルをめざしている。一言でいえば空飛ぶ電車だ。ライト&イージーというか、手軽に自分の足のように使える移動手段になること。そして、ローコストに基づいて365日、安い運賃を提供すること。もちろん安全が担保されていることが大前提だ。
ローコストについてだが、ユニットコストは開示しない。仮に開示できたとしても、現時点では期待に応えられるような値ではない。工場などと同じく、ある一定の操業度を保たないとコストが下がらないわけで、我々はまだそこに至っていない。その意味では、ローコストキャリアらしい“ローコスト”はまだ実現できていない。
JWやGKと比較して経験がないのは事実。これから運航し続けることで、彼らと同じようなものになるかは別として、模索しながら日本市場に合う姿にしていかなければならない。こうしたらこうなるのでは、という仮説の連続だが、この5ヶ月でかなり勉強できて、仮説の検証結果を蓄積してきている。3年後の黒字達成を目標としており、それまでに我々なりのモデルを構築したい。
-LCCは一般的にブランド面での差別化に注力しますが、MMの戦略についてお聞かせください
井上 ブランディングは非常に大事であると当初から認識しており、他社との差別化の大きな要因だと思う。LCCが安全で安価な運賃を提供しさえすれば差別化できていた時代は去っている。我々は世界中で見ても一番遅い参入者といえ、差別化なくして成功はないと考えている。
これまでの取り組みとしては、LCCらしいユニークさを意識し、「安全でおしゃれでおもろい会社」をめざしている。機体のデザインも差別化を意識し、完全に女性をターゲットにした。最初から女性を意識してブランディングした航空会社は我々が初めてではないか。20代後半から30代前半をターゲットとしていたが、実績もそのようになっており、手応えを感じている。