旅行業・観光業DX・IT化支援サービス

インタビュー:英国政観ディレクター キース・ビーチャム氏

 2012年、オリンピックやエリザベス女王の即位60周年で注目が集まる英国。全世界で大規模な「GREAT」キャンペーンも開始しており、日本でも都内で交通広告を展開している。日本から英国への旅行市場は長期的な減少が続いてきたが、2011年はプラス成長を実現する見込みとなっている。英国政府観光庁(VB)日本代表として東京に駐在するなど、日本市場の造詣も深いVB海外事業総括ディレクターのキース・ビーチャム氏に、VBの戦略を聞いた。


-日本市場の現状はどのように認識されているでしょうか

キース・ビーチャム氏(以下、敬称略) もともとVBは20ヶ国の重点市場のうちに日本を加えているが、現在、英国内の観光産業に従事する様々な会社や組織にとって日本の市場の重要性が増している。これは、中国など新興市場と異なり、日本人旅行者がロンドンだけでなく英国全体を広く訪れてくださるためだ。

 我々は、日本市場に潜在的な成長余力が十分にあると見ている。まず、添乗員付きのパッケージツアー。これは初めて英国を訪れる方や、シニア層の方が利用されるだろう。2つ目は、日本でいうところのFIT、添乗員の付かないスケルトンタイプのパッケージツアーだ。英国は安全で、英語が通じるなど快適に旅行していただけることから、ここにもチャンスがあると考えている。

 そして、3つ目は、英国でいうFIT、つまり完全なFITだ。航空券もホテルもオンラインで自ら手配する形態であり、少しずつ伸びを示し始めている。これら3つの形態のいずれもに十分な可能性がある。


-パッケージツアー、日本型FIT、完全FITそれぞれの動向をお聞かせください

ビーチャム 伝統的に日本から英国への旅行形態として、パッケージツアーは最も大きな割合を占めている。しかし旅行会社からのヒアリングでは、パッケージツアーは安定しているが成長もせず、日本型FITは、欧州の他国行きに比べて伸びが早いとのことだった。これはおそらく、欧州の他国は言語などの障壁があり、自由旅行が比較的困難であるためだろう。

 日本から英国への旅行市場においては、日本型FITが最も伸びる可能性があると見ている。2010年に、日本型FITと完全FITを合わせた日本からの個人旅行者の割合は全体の76%に達しているが、2000年には50%だった。1993年では34%で、この傾向がいかに強いかがはっきりと見て取れる。完全FITも、まだ数は少ないはずだが、傾向は確実に出はじめている。

 パッケージツアーのシェアの減少がファーストタイマーの減少を意味している可能性はあるが、日本の人口分布は世界でもユニークで、人口ピラミッド図が上下逆さまになっている。そして、我々の調査では、中年から高齢者の層は英国に魅力を感じているという結果が出ている。我々が効果的にプロモーションできれば、そうした人々の心を惹きつけ続け、ファーストタイマーの獲得もできると信じている。中でも団塊世代は重視しており、すでに大手旅行会社各社と共同で取り組みを始めている。