ホールセール特集(3):高まるネット販売率、店舗とのシナジー効果も
ホールセール商品の質を高め、店頭販売に力を入れているが、その一方で、インターネット販売も「無視できない」というのは各ホールセラーの一致した認識のようだ。店頭販売も伸ばしつつ、ネット販売の拡大もはかる。デジタル時代の新しい販売戦略を展開しながら、それぞれのメリットを生かしていくことで、収益アップを目論んでいる。第2回に引き続き、ホールセール3社にインターネット販売の方針をきいた。
ネットと店舗の共存はかる
それぞれの個性を生かした商品を造成
「ネット上での客観的事実だけではなく、店頭での主観的な意見で背中を押しもらいたいお客様も多いと思う」———そう話すのはJTBワールドバケーションズ(JTBWV)商品戦略部マーケティング・広報・パンフレット戦略部長の太田真規男氏。同社では、ネット=廉価商品、店頭=高額商品という棲み分けはおこなっていない。「ネットで安い商品が売れる傾向はあるが、あくまでもネットで売る商品も店頭で、あるいは店頭で売る商品もネットで販売するというのが大原則」とJTBWV商品戦略部長の遠藤修一氏は続ける。ネットと店頭を合わせたトータルでルックJTBの収益を伸ばしていくというのが基本的な販売方針だ。
現在、販売の割合は店頭90%に対してインターネットは10%。ネットには、純粋にオンラインによる予約だけでなく、ネット上で商品を見た後にコールセンターあるいは店頭で予約した分も含まれる。JTBWVではネット販売の割合を15%まで引き上げたいとするが、同時に店頭販売にも注力していく考えだ。
JTBWVでは、ネットの特性を生かした商品展開として昨年11月に「eコレクション」を始め、今年に入ってその販売を本格化させた。従来の流通だと非効率だが、絶対的にある特化型の需要に焦点をあて、「イベント」「スポーツ」「シーズン」のカテゴリーに分けて柔軟に商品を提供していく試みだ。インターネットの即時性を活かし、旅行内容にあわせた販売時期、販売期間を選択していく。太田氏は「(従来の商品展開では)FITになる層を取り込みたい。ロングテールのニッチマーケットをいくつ切り出せるかかが勝負だろう」と話す。デジタルパンフレットを基本として、認知度が高まるまでは定期的に出していき、その後は随時スポット展開していく計画だ。
一方、近畿日本ツーリスト(KNT)では、エア&ホテルのみの旅行など廉価型商品をインターネット専用のクリッキーに集約し、ホリデイとの差別化を明確にした。「販売戦略上、クリッキーも重視している。来年度からは全方面を扱う予定だ」とKNT執行役員・海外旅行商品事業本部本部長の田口久喜氏は意気込む。
現在のところホリデイとクリッキーの販売割合は半々。田口氏は「来年度はクリッキー55%、ホリデイ45%にひっくり返るのではないか」と予想する。しかし、「その割合を維持していきたい。クリッキーが増えすぎると価格競争に入らざるを得ず、また同じことの繰り返しになる」と警戒感もにじませる。
阪神航空フレンドツアーでは、集客全体に対するネット予約率が2010年の約6%から2011年下期では約19%にまで跳ね上がったという。阪急交通社阪神航空営業本部・東京フレンドツアーセンター所長の川上伸作氏は「直販では、電話での問い合わせからネット上で残席を確認しながら予約する傾向が強まっている」と話し、その背景として「販売店の減少、販売店に出向く時間の節約などがあるのではないか」と分析する。
川上氏は、ネット予約率は今年20%を超えるのではないかと予想するが、「提携販売店の予約は減っておらず、特にシニア層が直接店頭を訪れて、会話をしながら購入するスタイルは変わっていない」とも話し、ネット興隆の時代ながら店頭販売の存在意義は薄れていないとの見方を示した。