ホールセール特集(1):上期商品は「質」重視、商品拡充や早期取込策も
2012年上期、大手ホールセラー各社の商品は、「質」の向上を重視する傾向が強い。生き残りをかけて大規模な商品改革をする会社もあれば、強みである主力商品にさらに磨きをかけて上期商戦にのぞむ会社もある。今年は東日本大震災からの反動や団塊世代の大量定年などを受け、ほとんどのホールセラーが前年を上回る販売人員数の目標を設定しており、各社の競争はますます激化しそうだ。今回は、各社の海外ホールセール商品の傾向についてまとめた。(3回連載)
大規模な商品改革で品質向上
今年は商品の質の向上を重視し、商品の大幅な見直しをするホールセラーが目立った。
なかでも近畿日本ツーリスト(KNT)は「ホリデイが変わる、旅が変わる」を基本コンセプトに商品改革を断行。全コースを付加価値のある商品として提供する方針で、たとえば「うれしい」プランのヨーロッパ周遊・添乗員同行の旅の全コースで、夕食を選択可能とした。またハワイでは、現地到着時にサプライズで参加者にレイをかけるサービスを実施する。さらに、観光地の追加やホテルのアレンジに対応するセミオーダー型商品「マイツアー」を新たに設定。コンサルティングを通して細かい希望に応えていくことで、店舗の価値をアピールしつつ、個々の満足度の向上をめざす。
こうした質を重視した商品改革により、KNTの旅行代金(平均)は値上げとなった。旅行代金を前年並みから微増にとどめたホールセラーが多いが、KNT執行役員個人旅行事業本部カンパニー海外旅行商品事業本部長の田口久喜氏は「決して値上がりがマイナスになったとは思わない。いいものは高い、という自信を持って商品造成をした」と胸を張るほどだ。
また、JTBワールドバケーションズ(JTBWV)は今年、3ヶ年計画で実施してきた商品革新の集大成の年となる。10年の「ルックJTBの決心」で顧客不満足の解消を、11年の「進化」で「満足の創造」を目標に続けてきたが、12年度は「お客様の期待を上回る満足の追求」をはかる。
JTBWV常務取締役商品本部長の大谷恭久氏は一連の商品革新の成果として、並び席を例にあげた。10年は顧客アンケートなどで、「2名参加なのに席がバラバラ」との不満が29%あったため、並び席の確約を実施。これにより、11年は「並び席確約だからJTBを選んだ」との回答が20%となった。大谷氏は「同質の価格競争から脱却し、品質の向上で再利用意向が大幅に向上した」と評価。並び席に加え、利用便やホテルも確約したことで販売店への問い合わせも減少し、販売の効率化にも大きく貢献したという。