トップインタビュー:デルタ航空日本支社長ジェフリー・バーニアー氏
日本の空をめぐる状況は複雑だ。羽田空港の再国際化や規制緩和などのプラス要因と、東日本大震災や長引く消費不況といったマイナス要因が交錯し、LCCの参入や燃料高騰などが市場を揺さぶる。こうした日本市場の現状を外資系航空会社はどう捉えているのか。デルタ航空とノースウエスト航空の合併に伴い、09年4月からデルタ航空(DL)太平洋地区営業統括本部長兼日本支社長として日本市場における活動を指揮し、日本での業界歴も15年に及ぶ“知日派”のジェフリー・S・バーニアー氏に聞いた。
-東日本大震災から現在までの推移と今後の見通しについて教えてください
ジェフリー・S・バーニアー氏(以下、敬称略) 2011年の滑り出しは良かったものの、東日本大震災により深刻な打撃を受けた。しかしアウトバウンドは4月以降徐々に回復しはじめ、7月から9月には業績も相当程度まで戻すことができた。通年で前年並みとはいかないが、アウトバウンドは業務渡航、レジャーとも確実に回復してきている。10月から12月はややペースが落ちているが、これは震災の影響というより世界経済の動向に影響を受けたものだとみている。
インバウンドは深刻な状況が続いているのが実態だが、観光立国をめざす日本政府が観光産業の重要性を認識し、訪日旅行者の受け入れ体制の強化などに積極的に取り組んでおり、将来的には回復してくるはずだ。
DLでは、震災発生後、義援金やマイル提供、航空券提供の形で総額100万ドル以上を赤十字を通じて寄付したほか、企業寄付組織である「デルタ・ケア・ファンド」では被災した従業員だけでなく、その家族などもサポートした。DLにとって日本は重要な市場という以上に、大切な国であり震災からの復興に手を貸すのは当然だ。今後も、航空会社として東北地方や日本の観光復興にも協力していきたいと考えており、アメリカからのインバウンド誘致活動などにも協力していく方針だ。
-冬期スケジュールでは供給量が絞られていますが、理由を説明してください
バーニアー 日本には経済力を背景とした成熟した旅行市場があり、震災の有無にかかわらずDLにとっても極めて重要市場であり続けることは間違いない。DLは成田、羽田、中部、関空からフライトを運航しており、12月からは福岡/ホノルル線にも就航する。
しかし冬期は最も需要が落ち込む時期であり、燃油価格が大幅に値上がりしている今年のような状況では、ピーク時と同じ運航体制は組めない。供給過剰はビジネスにかかわる誰にとってもマイナスで、需給バランスを取ることは必要だ。
もちろん経済が上向き、需要増が見込めれば便数を増やせる準備はしている。現在は一時運休している羽田/デトロイト線も、需要が上向く4月以降は運航を再開する予定だ。羽田の利便性の高さなどを考えれば長期的にみて運航を支えるのに十分な需要が見込めるが、今冬は十分な需要を確保するのが難しい状況だ。