9月の出国者数、3ヶ月連続増-訪日は24.9%減、減少幅縮小
日本政府観光局(JNTO)によると、2011年9月の日本人出国者数の推計値は、前年比6.7%増の164万5000人となり、3ヶ月連続で前年を上回った。また、1月から9月の累計は0.3%増の1253万1000人となり、震災後初めての前年超えとなった。円高が進行し、米ドルをはじめ香港ドル、台湾ドル、韓国ウォン、タイバーツなどに対して円が最高値または近い水準を保っていることが、海外旅行需要を後押ししたとの考えだ。
一方、9月の訪日外客数は、推計値で24.9%減の53万9000人となった。震災発生後徐々に減少幅は縮小傾向になり、9月は減少幅が2割台まで回復。ただし、JNTOでは、原発事故による放射能汚染に対する懸念が依然として強く、子供連れの家族旅行や富裕層の回復に影響していると分析、また、続く円高や燃油サーチャージの上昇も阻害要因となったという。一方、観光客に比べビジネス客が先行して回復しているとも指摘。被災地から離れた北海道や関西、九州、沖縄への訪日旅行需要も一部市場では回復傾向にあるとした。
国、地域別でみると、タイが7.2%増と震災後初めて前年を上回り、9月中旬に震災後初めて実施したチャーター便による訪日ツアーもあり、9月単月で過去最高を記録。インドも9.4%増と前年を上回った。一方、最も減少幅が大きかったのはオーストラリアの43.8%減で、次いで韓国の36.9%減、カナダの36.0%減となった。また、9月から個人観光ビザの要件が緩和された中国は18.0%減、台湾は17.5%減、香港は15.6%減と減少幅が縮小した。
▽溝畑長官、訪日需要回復を評価-第3次補正や12年度予算で取り組み継続
観光庁長官の溝畑宏氏は21日の定例会見で、「主要アジア4ヶ国のうち、韓国を除く3ヶ国でマイナス10%台まで戻ってきている。今後回復していくうえで明るいニュース」と喜びを示し、「予想よりも早いスピードで回復している」とコメント。今後は「震災から1年という限られたタームで、どれだけ効果的な改革ができるかが大きい」との考えで、第3次補正予算でも今後の訪日需要回復に向けた取り組みを進めていく方針だ。他省庁とも連携し、ビザの緩和や新千歳空港、茨城空港の規制緩和、CIQの改善など協力して取り組んでいくという。
また、溝畑氏は、2012年度予算要求に盛り込んだ、外国人1万人に無料航空券を贈呈する「Fly to Japan!事業」についても「国内的な(旅行の)呼び水にしたい。また、海外に対しても訪日の関心を高めてもらえれば」と意欲を示した。同事業は外国人を実際に招待することで、SNSや口コミを通じて訪日旅行の安心・安全を発信するとともに、応募者への訪日イメージ調査を実施するもの。同氏によると、10月中旬にシンガポールで開催されたITBアジアの記者会見でも多くの海外メディアから質問があり「今まで関心もなかった人たちから関心を持ってもらっている。訪日に向けての関心を喚起しているのでは」と成果を述べた。