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12年度新卒傾向、成長分野への関心・志望が増加-採用数は横ばいか減少

 2012年度新卒採用は東日本大震災の影響で長期化しており、複数の旅行会社がスケジュールを後倒しにしたり、被災地を含むエリアの採用活動を調整したりしている。こうした状況のなかでも、旅行業界を志望する学生の意欲は高く、旅行商品企画や販売だけでなく、地域振興に関するビジネスやインバウンド、海外事業など、成長分野への関心を示す傾向も見られるという。旅行各社に、新卒採用で見られた学生たちの特徴や傾向や、外国人採用状況とともに、震災の影響についても聞いた。


採用数は横ばいか減少傾向に、応募比率は女性多く

 トラベルビジョンでは7月中旬からから8月中旬にかけて、旅行会社60社に2012年度新卒採用に関するアンケート調査を実施。このうち、採用活動をした(または活動中の)旅行会社で回答を得たのは11社(表を参照)。このうち、採用人数が100人を超えたのは2社のみ。エイチ・アイ・エス(HIS)は530人の募集人数に対して600人を採用する予定で、回答を得た企業の中でも多い。ただし、全体的には過去3年間の採用実績と比較すると、2009年度と比べると大幅に減少していたり、2011年度と比べると横ばいになっている企業が多かった。

 ジェイティービー(JTB)は09年度が900人、10年度が550人、11年度が340人とマイナス推移しており、12年度は11年度並み。KNTと日本旅行も同様で、年々減少傾向にある。また、阪急交通社は募集人数30人程度に対し、採用数も31人で、過去3年間も同様に推移している。

一方、採用数を増やした旅行会社もある。クラブツーリズムでは100人の募集に対し、このうち115人を採用。退職者が大幅に減少したことから10年度は88人、11年度は77人と採用人数を100人以下にしていたが、現場からスタッフ増員の要望もあり採用人数を拡大したという。また、アイエシイ・トラベル(IACE)では当初25人程度を募集していたが25人から30人程度に増える予定だという。

 また、男女の応募比率では、KNTとIACEは2対8で女性が多いと回答。名鉄観光サービスでも女性が7割ほど占めるという。採用人数での割合では阪急交通社、トップツアー、ユナイテッドツアーズが女性の比率が高いと回答。男女比が半々だったのはクラブツーリズムで、女性よりも男性の方が多かったのは名鉄観光サービスのみだった。


地域振興やインバウンドなどへの関心増加
“ゆとり世代”らしさも

 応募者の全体的な傾向としては、旅行そのものが好きでホスピタリティ精神が高く、人とコミュニケーションを取ることが好きな学生が多いようだ。半数の旅行会社が「業界研究が熱心」、「ホスピタリティが高い」などと回答する。

 また、JTBや日本旅行では「地域振興ビジネスに興味のある学生が年々増加している」、「インバウンド、地域振興といった成長分野に関心を持つ学生が多い」などと回答しており、旅行商品の企画、販売といったイメージされやすい業務だけでなく、幅広い視野で旅行業をとらえている学生も増えている。HISでは同社が進めるグローバル展開に期待して志望する学生もいるという。このほか、名鉄観光サービスでは応募動機が多様化してきていると分析する

 意欲の高い学生が多い一方で、「面接慣れして個性が見られない」といった意見のほか、「遅刻をしたら選考を受けるのをあきらめてしまうなど、粘り強さを感じない」、「敬語ができていない」など、一般的に言われている“ゆとり世代”らしさを感じている企業もある。また、一部の旅行会社によると、実際に店舗に足を運んだことがない学生もいるとし、「面接では意欲を感じても実際の店舗を見たことがないと聞くと、ウェブに頼っているようで残念だ」との印象を受けたという。旅行予約もオンラインが増えてきているが、採用活動もオンライン上で“済ませてしまう”学生もいるようだ。