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調査・統計:子連れ家族のニーズ、高い意欲を顕在需要へ−エイビーロード

 第2次ベビーブーマーが子どもを持つ親となり、ライフスタイルに変化が訪れている。かつて積極的に海外旅行に出かけ、市場を牽引していた世代だが、年齢層別の出国率は30代になって減少しており、子どもを持つ親世代の海外旅行人口が減少していることがうかがえる。要因のひとつに子ども連れで行く不安があるが、エイビーロード・リサーチ・センターが実施した調査では、子連れ家族の真のニーズと市場開拓の可能性を垣間見ることができた。ファミリー旅行の需要が高まる夏期を前に、確認しておきたい。
                
                
                       
調査名:子供連れ家族の海外旅行ニーズについての研究
調査実施:エイビーロード・リサーチ・センター
調査期間:2010年2月12日〜2月15日
対象:市場規模調査/4万2349サンプル
    (うち12歳未満の子どもとの同居家族1万3413サンプル)
   子供連れ家族のニーズ調査/100サンプル
   (市場規模調査で、子供連れ家族に配慮されたツアーが予算内に見つかった場合、
  年間の海外旅行数が増えると回答した人から抽出)



海外旅行の高い意欲と不安

 エイビーロード・リサーチ・センターが同調査を実施した目的は、(1)海外旅行に行きたくても子ども連れで旅行に行くことに対して不安があり、旅行をあきらめている人達の存在規模とニーズに応えた旅行商品の登場で市場機会があるのかを解明すること、(2)こうした人たちのニーズを把握し、新たな旅行商品造成のためのヒントを得る、の2点だ。

 実際、12歳未満の子どもとの旅行意向は、対象の1万3413サンプルのうち98.1%が「ある」とし、「ない」はわずか1.9%。海外旅行に関しても、近距離方面で67.0%、遠距離方面で45.8%が海外旅行に行きたい意向を持っており、ニーズはあることがわかる。

 一方、海外旅行への意向がありながらも、「子ども連れで旅行するにあたって何らかの不安を感じる」人は43.4%。特に子どもの年齢が0歳から2歳の人の「非常に不安を感じる」が13.9%と全体平均より8.0ポイント高く、「やや不安を感じる」も61.5%で平均より24.0ポイント高い。意向がありながら子連れ旅行に不安を感じる人のうち、過去1年間のうち1回も海外旅行に行かなかった人は、75.3%と7割以上が海外旅行をあきらめていたことが分かった。




子連れ配慮のツアーが予算以内であれば200万人増える

 では、子どもを連れて海外旅行に行く際の不安な点とは何か。最も多かったのが「子どもが体調を崩した場合、事故・怪我など何かあった場合の医療体制」(62.6%)だ。そのほか「子どもが泣いたり騒いだりしたとき、ほかの観光客やツアー客の目が気になる」(59.0%)、「現地の衛生・治安」(50.5%)、「子どもの世話で自分が疲れてしまいそう」(50.0%)が半数を超えた意見だった。また、なかには「子どもに適した食事があるか」(42.0%)、「荷物が多くなってしまい、持ち運びが大変そう」(41.7%)、「ベビーベッド・部屋の広さなどの個人的な要望に応えてもらえるかどうか」(15.9%)など、旅行申込時の説明や特典内容などの工夫などで解決できそうなポイントも見受けられる。

 子連れ旅行に不安があり、かつ海外旅行の意向があった人のうち、子連れに配慮されたツアーが予算内で見つかった場合、年間の海外旅行回数が増えるとしたのは、48.5%。このうち「過去1年間で1度も海外旅行に行っていない」かつ「年間で1回増える」とした人が36.5%で最も多かった。不安材料が払拭され、予算にかなえば海外旅行に行きたいという意欲が感じられる。

 子どもの年齢別で見ると、0歳から2歳が25.9%と最も多く、次いで3歳から5歳が16.4%と年齢が低い方が海外旅行への意向が高い(増加すると回答した海外旅行の回数ベース)。同調査では、親の年代別に海外旅行回数が増えると回答した割合を算出し、それぞれ年代別人口(総務省「国税調査報告」2008年)に掛けあわせて増加見込み人数を試算した。これによると、増加が見込まれる人数は、209万6058人、渡航回数では237万8849回としている。



チャンスは5歳以下、0歳から2歳の子どもの家族

 子連れ旅行で参加したいツアー・サービスでは、「機内の座席で同行者と並び席が確約されている」(75.0%)が最多。これは、料金を追加で払っても良いと思うサービスでも24.0%と最も多かった。また、「キャンセル料がかかる時期に体調を崩した場合でも、その他の日程に変更でき、キャンセル料が減額になる」(68.0%)、「子どもの年齢を考慮したメニューがある」(61.0%)も、料金を追加で払っても良いサービスで、それぞれ14.0%と5番目に多い項目となっている。また、料金を追加で払っても良いサービスでは、「大人と一緒に参加する子ども向けプログラムが用意されている」(23.0%)、「自宅/空港の送迎サービス」(15.0%)も要望が多かった。

 注目したいのは「旅行の目的・理由」だ。平均では「家族・親族の思い出作りや絆を深めたいから」(76.0%)が最も多く、「子どもに海外旅行を経験させてあげたいから」(73.0%)、「子どもを楽しませてあげたい」(72.0%)と、家族や子どもを中心とする考え方がトップ3位を占める。これはいずれの年代でも同じ傾向にあるが、子どもの年齢が0歳から2歳の親の場合、「自分が楽しみたいから/リフレッシュしたいから」が72.1%となり、平均よりも15.1ポイント高かった。

 エイビーロード・リサーチ・センターはこれらの調査結果から、子連れ旅行に何らかの不安を持ちながら子連れ旅行に優しい商品へのニーズが高い5歳以下、特に0歳から2歳をターゲットセグメントとし、子連れ旅行の際に望む情報を提供しながら不安や不便を排除したツアーを造成することで、子連れ旅行市場を拡大できるとみている。