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田村新長官、双方向交流を重視-訪日は体制強化

  • 2015年9月16日

新観光庁長官の田村明比古氏 このほど観光庁長官に就任した田村明比古氏は、9月16日に初めて開催した専門誌会見で、ツーウェイツーリズムの重要性について述べ、「双方向のバランスが取れた行き来が重要」と強調した。同氏は「観光はビジネスであると同時に、国家間の友好や安全保障などの目的がある」と説明。今後日本の人口が減り、少子高齢化がさらに進むことを踏まえ、持続的な経済成長のためにも内外の交流人口を増やすことが必要とした。

 インバウンドについては「海外の市場を開拓するという部分では成果が上がってきており、さらに磨き上げていきたい」考え。また、財務省の発表した7月の旅行収支(速報値)が1295億円の黒字となり、7月として過去最高、単月として歴代2位になったことに触れ、訪日外客の消費が拡大するなか「その効果を日本全国に波及させることが地方創生の観点から重要。アクション・プログラムに基づき、全力で取り組んでいきたい」と語った。

 一方で同氏は、急激にインバウンドが増えたため、受入体制が追いついていないことを問題点として挙げた。旅行業界についても、アウトバウンド、国内旅行中心のビジネスモデルから「インバウンド対応型に変えていかなければならない」と指摘。「旅行業や宿泊業に加え、広い意味での観光産業、ひいては国全体がインバウンドを受け入れる体制にならなければならない」と語った。

 また、観光庁が16年度の予算概算要求で「『2000万人時代』に備えた受入環境整備緊急対策事業」として4億円を要求していることについては「他の省庁では取り組みにくい部分を緊急対策としておこなっていく」と説明した。例えば宿泊施設不足については「東京近郊のビジネスホテル、シティホテルなどは稼働率が高く8割を超えているが、旅館は40数%。外国人が利用しづらい、どんなサービスがあるのかわからないという問題がある」と現状を語った。その上で観光庁として、旅館の空室情報やサービスの内容などの情報を発信していきたいとした。

 減少の続くアウトバウンドについては、円安などが旅行代金に影響するなか、LCCによる国際線の運航が増加していることに期待を示した。また、「航空業界はビジネスのお客様を中心としている」と述べ、「一般の観光客のための選択肢をどう増やしていくか」が今後の課題であるとした。さらに、海外旅行には魅力的な旅行商品の造成も重要で、「デスティネーションとなる国と協力して手を打っていく必要があるのでは」と述べた。

 さらに、同氏は旅行業界と航空業界の協力の重要性についても指摘。「海外旅行にとって航空業界の役割は極めて大きいので、2人3脚でやっていかなければならない」とし、連携を観光庁として支援していく考えを述べた。このほか、航空業界に対しては「利用者の立場で『もう少しこう変わったほうがいい』と要望していくことが必要では」と語った。

 また、「東京オリンピックのその先を見た時、日本が『一流の観光国』としてどう育っていくのか、順序立てて戦略を立て、対応していかなければならない」と語り、さまざまなデータを収集・分析した上で戦略を立案していきたい考えを示した。加えて、1年に1度の予算期に合わせた立案では「実際のニーズにかけ離れた行政になってしまう可能性がある」とし、「4半期ごとに方向性を決定し、実行して成果を得るサイクルで考えていきたい」とした。