トップインタビュー:海外邦人安全協会会長の小野正昭氏
日本人の海外旅行に意識変革を
旅行会社ができる最大のサービスとは
海外邦人安全協会会長(JOSA)の小野正昭氏はこのほど本誌の取材に応え、ここ数年来旅行業界を悩ませている海外でのテロ事件などに対し、関係者が取るべき対応について語った。小野氏は1970年に外務省に入省して以来、40年以上にわたって世界の各地で観光客を含む日本人の安全確保に努めた経験を持つ。業界の新たなキーワードとなっている「安心・安全」を、旅行会社は今後どのようにして確保していくべきか、小野氏に聞いた。
-まずは読者に向けて、貴会の紹介をお願いします
小野正昭氏(以下敬称略) 1976年に外務省所管の社団法人「海外生活情報センター」として設立され、昨年で創立40周年を迎えた。設立当時は増加を続ける海外旅行者の安全確保に重きを置いていたが、2000年には現在の「海外邦人安全協会」に改称し、企業の出張者や駐在員などに向けた活動も開始した。13年にからは政府認可の一般社団法人となった。副会長は共同通信デジタルのリスク総合研究所長、理事は大使経験者やリスク対策関連企業の危機管理責任者、日本旅行業協会(JATA)の事務局長など、参与は外務省の診療所長が務めている。現在の会員数は約110社で、ジェイティービー(JTB)や日本旅行、阪急交通社、全日空(NH)、東日本旅客鉄道(JR東日本)なども加盟している。
-具体的な活動内容は
小野 定期的に有識者を招いて講演会やセミナーを開催し、海外情勢や治安対策などに関する情報を発信している。昨年は英国、フランス、フィリピン、インドネシアの前大使などを招いて、会員向けに10回の講演会とセミナーを開催し、600名超が参加した。また、企業などに出向いて20回以上の出張講演会を開いた。昨年11月にはコロンビアで日本人学生が殺害されたので、今後は学校関係などを対象に講演会を強化するつもりだ。強盗に遭ったら抵抗しない、追いかけないなど、基本的な対応を知っていれば命を落とすこともなかったのではと考えると、残念でならない。
そのほか、ウェブサイトでは「海外安全マニュアル」や「出発直前の海外安全チェック」などのコンテンツを提供し、外務省の「海外安全ホームページ」や「たびレジ」、主要国の治安、衛生、医療などに関するさまざまな情報にアクセスできるようにしている。また、在外公館からの海外安全対策情報をメールで会員向けに配信したり、外務省の「海外安全官民協力会議」などに参画したりといった取り組みも続けている。
-会長のご経歴についてもお教え下さい
小野 1970年に外務省に入省して以来、領事関連の仕事を多く務めた。73年には第4次中東戦争下のエジプトで日本人旅行者の脱出を支援し、その後も86年の三井物産マニラ支店長誘拐事件、2001年の米国同時多発テロ事件などの対応に当たった。駐メキシコ大使時代の09年には、現地で新型インフルエンザの流行にも直面している。その後11年に退官し、13年からJOSAの会長を務めている。