ANAのA380とJALのA350、導入に秘めた戦略は-各担当者が講演

満席の会場  日本を代表する航空会社の全日空(NH)と日本航空(JL)が、時をほぼ同じくしてエアバスの新機材を導入した。NHがA380型機、 JLがA350型機の導入を決めた背景には、どのような戦略や企業としての思いがあったのか。このほど開催された日本航空協会の定例講演会の第284回「ANAのA380とJALのA350、新機種導入に秘められた戦略を探る!」では、導入に携わった両社の担当者が登壇。導入に至った過程とその内幕を明かした。

 なお、日本航空協会によると今回の講演会への関心度は非常に高く、参加希望者が応募開始から3日間で定員の300名に達し、その後も希望者が増え続けたことから、異例の対応として後日に同内容の追加講演の開催を決定。初回の会場は満席となり、キャンセル待ちが出る盛況だった。

ANA、リゾート路線の定石とは真逆の戦略

牧氏  講演会の第1部では、NHのCEマネジメント室商品企画部プロダクト企画チームマネジャーを務める牧克亘氏が、「ANA A380『客室仕様』と『ハワイ戦略』」と題した講演で、A380型機導入の経緯やねらいについて説明。冒頭では現在の航空業界が、拠点空港まで大量の旅客を大型機材で運ぶ「ハブ&スポーク」の時代から、技術革新により航続距離が延びた機材で目的地まで直行する「ポイント・トゥー・ポイント」の時代に移行しつつあることをデータで解説するとともに、A380型機のような超大型機材による運航が“時代遅れ”であることは、NH自身も認識しているとの考えを明らかにした。

 牧氏は「A380型機を最終的に3機もホノルル線に投入するのは、常識外れの戦略」と述べた上で、「しかし別の見方をすれば、ホノルル線は旅客の収入や世代がさまざまで、幅広い客層から支持され、リピーターも多い珍しい路線」と主張。2018年にハワイを訪れた日本人が158万人で、1日あたりでは5000人に上るなど需要が安定しているだけでなく、潜在需要も大きい特異な路線であることを強調した。

 あわせて、特典航空券によるハワイ旅行などを希望するマイレージ会員の要望が大きい一方、NHの国際線ネットワークはビジネス路線が主体で、貯めたマイルをレジャーで使うニーズに応えきれていなかったことを説明。「その意味で、A380型機をホノルル線に導入したのは、単に1つの路線のためというよりは、他のNHの路線に乗ってもらうことも考えた判断だった」と語った。