現地レポート:西オーストラリア州(1)世界遺産登録のニンガルーコースト

  • 2011年7月29日

ジンベエザメと泳ぐツアーで感動体験
世界遺産登録で訴求力アップ-ニンガルーコースト

今回、遭遇したジンベエザメ。体長は約7メートル。写真で見るのとは迫力が違う(ツアー参加者提供)

 西オーストラリア州北西部に位置し、全長260キロメートルにわたり200種類以上の珊瑚、500種類以上の魚が生息するニンガルーコースト。毎年3月下旬から7月にかけてジンベエザメが出没するスポットとしても知られ、ジンベエザメと泳ぐツアーが人気だ。2011年3月からカンタス航空(QF)がニンガルーコーストの玄関口となるエクスマウスにパースから週3便で路線を開設し、さらに今年、世界自然遺産として登録されたことで旅行商品としてのアピール度が高まった。今回は、西オーストラリア州政府観光局(TWA)とQFが実施した旅行会社対象のFAMツアーの様子を2回に分けてレポートする。第1回は世界遺産で注目を浴びる、ニンガルーコーストでのジンベエザメと泳ぐツアーを紹介する。


世界遺産でジンベエザメと泳げる魅力

ニンガルーコーストはオーストラリアで19番目の世界遺産

 ジンベエザメはその名の通り「サメ科」の一種であり、「ジンベエザメと泳ぐ」と話すと「サメと泳ぐなんて危険なのではないか」と心配する人もいるが、彼らの主食はプランクトンや小魚であり、人間に危険を及ぼすことはない。北緯30度から南緯約18度の間の水温18度から30度の赤道をはさむ海域に多く出没し、海面の温度が21度から25度で、栄養分の豊富な冷たい上昇潮流とプランクトンが豊富な温かい水が混ざり合う海域を好むと言われている。その一つが、西オーストラリア州のニンガルーコーストなのである。

船内の様子。参加者はシニア層から若い世代まで様々

 ニンガルーコーストでは、毎年3月から4月頃に200種類以上の珊瑚の産卵シーズンを迎え、それに合わせて発生するプランクトンの大群を求めてジンベエザメが訪れる。ちょうどこの時期から7月上旬頃までがシーズンとなり、ジンベエザメと泳ぐツアーが催行される。遭遇率が高いと言われているのが特徴で、それはセスナ機が上空からジンベエザメを探し、船がその情報を基にジンベエザメへ近付く形式で催行されるからだ。また、美しい海の移動そのものも魅力的で、船上ではイルカの群れやクジラに遭遇することも多い。一つのアクティビティとして船での時間も充実したものにしてくれる。

今回のツアーでは5回程ザトウクジラに遭遇。ホエールウォッチングも楽しむことができた

 さらに、今年6月の世界遺産登録を受け、旅行商品に「世界遺産を訪れる」という目的を加えることができる。「ニンガルー海洋公園」や、その美しい海に面した「ケープレンジ国立公園」などが世界遺産に含まれているが、ツアーの舞台となるニンガルー海洋公園は、陸地から近い場所にある珊瑚礁(ニンガルーリーフ)が海岸線に260キロメートル続く場所で、周囲にはジンベエザメのほかにもウミガメやマンタ、ジュゴンなどの海洋生物、そして200種類以上の珊瑚、500種類以上の魚が生息している。

船から見える海岸線はケープレンジ国立公園

 FAMツアーの参加者からは「より消費者に訴求しやすい素材となった」「世界遺産と言うことで分かりやすく、売りやすくなる」という期待が多く聞かれた。TWA日本局長の吉澤英樹氏も「世界遺産を切り口に商品を展開することで、ターゲットの幅が広がる」と話し、これまでのダイバーマーケットはもとより、今後はよりターゲットを広げてダイバー以外の通常の旅行者を取り込んでいきたい考えだ。


ジンベエザメと泳いだ体験や感動を共有

停泊中の船へボートで移動。ボートには1度に10人程乗船できる

 ツアーはインド洋に突き出たノースウエスト岬の先端に位置するエクスマウス、もしくはニンガルー海洋公園の南端に位置するリゾート地コーラル・ベイから催行されているが、QFのパース/エクスマウス線開設により、日本から訪れる場合はエクスマウスから催行されるツアーに参加する方が利便性が高い。

マスクとフィンは、インストラクターが体型に合わせて選んでくれる

 エクスマウスから催行されるツアーは11社、料金は375ドルから395ドル程度。各ツアー「ジンベエザメと泳ぐ」という目的は同じであるが、催行人員、インストラクターの人数など様々であるという。インストラクターによる説明は全て英語となるため、英語に自信のない客層が参加する場合は、通訳として日本からの添乗員の参加、もしくは日本語ガイドを付けるオペレーションも必要となるだろう。

用具を装着後、インストラクターが飛び込み方や泳ぎ方を説明

 ツアーは午前7時30分頃にバスが各ホテルを周り、参加者をピックアップ。その後、約30分で乗船スポットへ移動する。ビーチからは小型ボートで停泊中の船にアプローチし、水着やツアーが用意するウェットスーツに着替える。船内に更衣室は用意されていないので、事前にホテルで水着を着用してくる方が便利だ。

 乗船後、すぐにインストラクターによる説明が行なわれ、環礁内で20分程泳ぐ練習をした後にジンベエザメが出没するスポットへ移動。移動中、「まだか、まだか」とセスナ機からの通信が気になるが、突然現れるクジラや魚の群れが船内を楽しませてくれる。

初心者が実際に海中で撮った写真。泳ぎが苦手であったが無事に撮影できた

 すると、今回は乗船後3時間程で、ジンベエザメの出現情報が入った。その途端、一気に船内が緊迫した雰囲気に。そして、インストラクターの指示に従って参加者は海に飛び込む。

 インストラクターが指示する方へ無心に泳ぎ、水面に顔を付けてみると、突然目の前に大きなジンベエザメが姿を現した。その迫力に全員が興奮。泳ぎが苦手なことも忘れるほどで、なんとか写真に収めることもできた。経験の有無ではなく「ジンベエザメと一緒に泳ぎたい」という気持ちさえあれば十分だということを、体感することができた。


遭遇後、一気に盛り上がる船内

チームに分かれ、海の中へ。指示に従ってジンベエザメに向かう

 ジンベエザメにストレスを与えないよう、3メートル以上距離をとって泳ぐというルールが設けられており、インストラクターがしっかり管理している。また、1度に10人以上が泳ぐことも禁止されているため、20人乗船していた今回のツアーでは2チームに分かれ、1チームごとに5分程ずつ泳ぎ、2チーム目に交代した。

船内でのランチ。サンドウィッチ形式で、テーブルのない船内でも食べやすい

 泳いだ後は、参加者と「感動」の共有。距離をおいて泳ぐとはいえ、出会ったジンベエザメは7メートル以上あり、迫力があった。その体験に船上は盛り上がり、午前9時頃から16時まで長時間船内にいたことを忘れさせてくれるほどである。今回、ジンベエザメとの遭遇回数は3回で計3頭に出会い、十分満喫することができた。

船内にはコーヒーや紅茶、ジュース等の飲み物、その他果物やお菓子なども用意されている

 日中は、船内で過ごすことになるため、昼食や軽食などもツアーで用意されている。しかし、ジンベエザメの出没のタイミングが最優先されるため、決まった時間に昼食を取ることはできない。今回参加したツアーでは、ジンベエザメと泳ぎ終えた後に昼食を取る時間が設けられた。泳いでいる最中は体力が消耗するため、ツアーで用意される果物やお菓子などの軽食を食べながらジンベエザメの遭遇に備えておくことが必要だ。ツアーで提供されるものは全て料金に含まれているため、船内で支払いが必要なものはない。

 なお、ツアーは天候や高波などの海のコンディションにより催行が中止される場合もある。しかし、無料で他の日への振替が可能であるため、余裕を持った旅程を組めばよりジンベエザメと泳ぐ実現性が高くなるだろう。


世界遺産を切り口とすることで商品展開しやすく
ハネムーンマーケットにも提案

ツアー集合写真。参加者の表情に、ジンベエザメと泳いだ感動、充実した体験がうかがえる

 今回参加したジンベエザメツアーでは、60代のシニア層の参加も見られた。ニンガルーコーストではダイビングではなく、シュノーケリングでジンベエザメと泳ぐことができるので、簡単に参加できる。また、体調や疲れ具合に合わせて泳ぐ時間を調整したり、泳がずに船上からの見学にすることもできるため、シニアでも無理なく体験することができるのだ。今回のFAMツアー参加者もマリンスポーツ経験者が少なく、シュノーケリングも初めてというレベルだったが、「アスリートレベルの泳ぎが必要かと思っていたが、特に事前の練習もせず泳ぐことができた」と、安心する声が多く聞かれた。

今回お世話になったスタッフたち。気さくでフレンドリーだ

 また、ツアーのインストラクターがジンベエザメを見つけ、そこにかけつける時の興奮、シュノーケリングでジンベエザメに追いつき、それを写真に収めることができた時の喜びは何物にも代えがたいものがあり、忘れられない思い出となった。「ジンベエザメと泳ぐ」というロマンティックな体験ができるということ、そしてその体験や思い出を共有することができるという点では、ハネムーンマーケットへも提案したいアクティビティである。

カンタス航空のパース/エクスマウス線就航により、アクセス性も高く

パース/エクスマウス間はカンタスリンクが運航

 カンタス航空(QF)は2011年3月30日から、パース/エクスマウス線の運航を開始した。エクスマウスまではこれまで、パースから陸路で移動しなければならず、同路線の開設により利便性が高まった。さらに、QFの周遊券「ウォークアバウトパス」に組み込むことも可能だ。

 「ウォークアバウトパス」は、成田、羽田、大阪発のQFオーストラリア行き国際線航空券を購入した人に限り適用するオーストラリア国内線の特別運賃。国内1区間から最大6区間まで購入可能で、24都市を結ぶQF国内線から自由に選択することができる。7月29日現在、パース/エクスマウス間の国際航空券本体運賃は片道1万円(諸税、燃油費除く)から利用できるため、便利にかつリーズナブルにエクスマウスへのアクセスが可能になった。

 また、QFは羽田/シンガポール間を、日本航空(JL)とのコードシェア便で運航している。QFのパース/シンガポール線と合わせ、仕事帰りに短期間で旅程を組むことも可能だ。


▽QF パース/エクスマウス線スケジュール(週3便)

QF1950便 PER 10時25分発/LEA 12時15分着(水曜日)
QF1950便 PER 09時50分発/LEA 11時40分着(金曜日)
QF1950便 PER 09時30分発/LEA 11時20分着(日曜日)

QF1951便 LEA 12時55分発/PER 14時40分着(水曜日)
QF195便 LEA 12時20分発/PER 14時05分着(金曜日)
QF1951便 LEA 12時00分発/PER 13時45分着(日曜日)
※2011年8月1日現在

▽QF羽田/シンガポール線スケジュール(JLとのコードシェア運航、デイリー)

JL035/QF4026便 HND 23時50分発/SIN 06時00分着
QF72便 SIN 09時05分発/PER 14時15分着※翌日
QF71便 PER 15時35分発/SIN 20時55分着
JL036/QF4025便 SIN 21時55分発/HND 05時50分着※翌日
※2011年8月11日現在

取材協力:西オーストラリア州政府観光局、カンタス航空
取材:本誌 福田えつこ