ANAホールディングス、7月に単月営業黒字
ANAホールディングス(HD)の芝田浩二社長は7日の記者会見で、単月ベースの営業損益が7月で黒字に転じるとの見通しを明らかにした。本業のもうけを示す損益が黒字化すれば2021年10~12月期以来となる。
「業績は順調だ」。芝田浩二社長は強調した。23年3月期の連結営業損益は500億円と3期ぶりの黒字化を目指している。芝田社長は「22年4~6月期は利益計画の想定を上回る見通し」と語った。
その背景の一つが国内線の需要回復だ。ANAブランドと傘下の格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーション(大阪府田尻町)をあわせた旅客数は4~6月期、コロナ前の19年比7割に回復した。7~8月は同9割まで回復すると見込む。ANAブランドの国内線は4月末時点で、23年3月末にコロナ前の19年比の9割に回復するとの見通しを示している。
国際線も政府の水際対策緩和以降、回復傾向にある。芝田社長は国際線旅客数について「計画より上振れしている」と話した。国際線の旅客数は4月末時点で、4~6月期にコロナ前比25%、23年3月末に同4割の回復を見込んでいたが、4~6月期は計画を上回って推移している。
7月の国際線は41路線を運航する計画。運航便数は20年度計画比で3割にとどまるが、路線数は同5割に回復した。全日本空輸(ANA)の井上慎一社長によると「東南アジアから日本を乗り継いで米国に向かう三国間流動が増えている」という。需要回復にはビザの緩和、入国者数上限の撤廃などがカギとなる。芝田社長は「入国規制をG7各国と同じレベルまで緩和していただきたい」と改めて政府に求めた。
国内ではコロナの感染再拡大の兆しがある。政府は7月から開始するとしていた観光需要喚起策「全国旅行支援」を延期する方針。燃油高や円安も懸念材料となる。芝田社長は燃油高の影響について「日本の旅客が海外に出るモチベーションにはマイナスの影響がある」と話した。
同社はコロナ禍で進めた月例賃金の減額を22年3月末で終了し、今期は夏の一時金も2年ぶりに支給した。航空機の早期退役や採用抑制などの効果で、20年3月期比で約1300億円の固定費を減らす計画だが、需要回復に伴ってコストは増加する。
芝田社長は「一定程度、需要の伸びに陰りがあったとしても、構造改革で培ったコスト削減の下支えで収益を確保できるとみている」と話した。需要の増減が今後も想定される中で、機動的な需要予測の見直しやコストコントロールも求められる。