コロナ禍の「在籍したまま出向」普及を阻む制度の「壁」とは?

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在籍型出向
在籍型出向

 コロナ禍での対応として、勤務先と雇用関係を維持したまま他社に出向する「在籍型出向」について、政府は雇用の流動化を進めるツールとして中長期的に普及を促す構えだ。出向した労働者からも「出向先で学んだ新しいスキルを、自社に戻った後も生かせる」とおおむね好評だ。ただ、国の想定ほど利用は進んでいない。背景を探ると、既存制度のある壁が垣間見える。

コロナ禍で急きょ作られた新制度「在籍型出向」

 在籍型出向とは出向元と雇用関係を維持したまま別の企業で働く制度。コロナ禍で仕事が減り、人手が余った会社が、人員整理を行わずに人手不足の別の会社で働いてもらうことができる。ただ、出向には労働者の同意が必要で、期間や給与負担などは、双方の企業が話し合って決める。

 厚生労働省は2020年度の第3次補正と21年度で計581億円の予算を確保し、21年2月に、出向元と出向先双方の企業を対象に1日最大1万2000円を支給する「産業雇用安定助成金」を創設。今年度は450億円の予算で、3万600人の利用を見込む。

旅行業界から飲食業界に 出向者「目標のための行動を考えるように」

 「休業するよりも出向を経験できて良かった」。海外旅行のパッケージツアーの企画・販売を手がける「エス・ティー・ワールド」(東京都)の営業マン、後藤真紀(まさき)さん(49)は利点をこう振り返った。

 後藤さんは21年1月から1年3カ月、営業コンサルティング会社「インプレックス アンド カンパニー」(東京都)に出向した。「インプレックス」では、飲食店の販路拡大を支援するサービスの売り込みなどを担当した。

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