経済界などの強い要望を受け政府は10日、新型コロナウイルス対策の水際措置を緩和し、1日当たりの入国者数の上限を7千人から1万人に引き上げた。航空業界では足元の予約数に回復傾向も見られ、観光業界では観光目的の入国再開を含めた制限撤廃に期待が高まる。ただ、新規感染者数が再び増えて「第7波」への警戒も強まるなか、難しい対応は続きそうだ。
政府は昨年11月30日、感染力の強いオミクロン株の流入を防ぐため、全世界からの外国人の新規入国停止に踏み切った。その後、各国が水際対策の緩和に動く中、今年3月1日にはビジネス関係者や技能実習生など観光目的以外の新規入国を許可。3月14日からは1日当たりの入国者数の上限を5千人から7千人に引き上げていた。
松野博一官房長官は11日の記者会見でさらなる制限緩和について、「内外の感染状況、日本人の帰国状況などを踏まえながら適切に判断していく」と述べた。
羽田空港第3ターミナルでは11日、国際線の到着ロビーは閑散としたままだった。陰性証明がある旅客も含め全到着客に感染検査を求めるなど、米国などより厳しい防疫措置が敬遠されている。日本航空の担当者は「入国者数を引き上げても制度を変えない限り本格的な再開には結びつかないのでは」とみている。
一方、今月1日に今回の緩和措置が発表されて以降、国際線の予約数はゆるやかに増加。日本航空は6月以降、アジアから米国への乗り継ぎ便も含め予約が回復、全日本空輸も国際路線全体で増加傾向という。
また、外務省は1日、米英両国など106カ国の「感染症危険情報」を、レベル3(渡航中止勧告)からレベル2(不要不急の渡航自粛)に緩和した。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)の担当者は「ツアー再開のタイミング」と海外旅行の再開と、インバウンド(訪日外国人客)の復活に期待を寄せている。(飯嶋彩希)