プラ新法1日施行 客室アメニティ、脱プラへ

山陽物産が製造・販売する非食用米配合のアメニティ(同社提供)
山陽物産が製造・販売する非食用米配合のアメニティ(同社提供)

4月1日施行のプラスチック資源循環促進法(プラスチック新法)により、宿泊施設で無償提供される使い捨て歯ブラシやカミソリも削減の取り組みが求められる。具体的には、有料化や軽量化といった対策をとることが想定される。コスト減も期待できるが、アメニティの充実度でホテルを選ぶ向きもあり、客の受け止めを不安視する声も。用品メーカーなどはバイオマス由来製品の強化を急いでいる。

阪急阪神ホテルズは全18の直営ホテルで、客室に備えていた歯ブラシなどの使い捨てアメニティを、4月1日からシャワーキャップなど品数を減らしたうえで要望のある宿泊客のみにフロントで提供する方式に切り替える。京阪ホテルズ&リゾーツは旗艦店「ザ・サウザンド キョウト」(京都市下京区)などで同日から歯ブラシなどを客室に置かないようにし、客自ら持参する宿泊の提案も始める。

全国56施設が加盟するホテルチェーン「JR東日本ホテルズ」は、くしを廃止し、ヘアブラシなど7品目を代替素材に切り替えた。

歯ブラシについては同品質の代替品が見つからず、今回は変更や廃止を断念。担当者は「歯ブラシは固さなど利用客からの要望が多様なグッズ。代替素材が見つかるまで時間をかけて検討したい」と話す。

「これまでも環境対策に取り組んでいたが、新法はホテル業界が変わるきっかけになるのでは」と話すのは、東急ホテルズの担当者だ。既存のアメニティを消費後、代替素材品に順次変更する方針。包材も紙由来に変え、ボディータオルは使い捨てから再利用が可能な布製にするという。

宿泊業で焦点となるのは歯ブラシ、ヘアブラシ、くし、カミソリ、シャワーキャップの5品目。シャンプーなどのミニボトルは対象から外されたが、経済産業省の担当者は「詰め替え式の大型ボトルに変更済みの施設が多いとのヒアリングを基に総合的に判断した」とし、品目や規制内容は今後、見直しの可能性もあるとする。

ミニボトル型アメニティは有名ブランド品を扱う高級ホテルが多く、ESG(環境・社会・企業統治)投資や消費を意識する外資系ホテルを中心に大型ボトルへの切り替えが進む。

英インターコンチネンタルホテルズグループは傘下ホテルで年間平均2億個を使っていたミニボトル型アメニティの廃止を決定。2021年までに大型ボトルへ切り替える計画だったが、インターコンチネンタルホテル大阪(大阪市北区)は今年2月に全客室での切り替えを完了した。米国のマリオット・インターナショナルやハイアットホテルズコーポレーションも同様に廃止した。

国内系では規制対象外との理由でミニボトル型を続けるホテルもあり、「客室の楽しみとなっている」(阪急阪神ホテルズ)「(サービスに)あって当然との考えもある」(京阪ホテルズ&リゾーツ)など、客がどう受け止めるか懸念する声が上がる。ホテルジャーナリストの井村日登美氏は「欧米に比べ、日本のホテルはアメニティがそもそも多すぎる」と指摘。「過渡期には色んな反応が出るものだが、持参するのがいずれ当たり前になる。ホテルにとってはコストを減らすチャンスでもある」とする。

一方、対象品目を作る用品メーカーへの打撃は必至だ。だが、新法では環境配慮型素材への変更が認められており、山陽物産(愛媛県松前町)は、古米など非食用米を配合した歯ブラシやヘアブラシのアメニティ販売が昨年比10倍で推移。新法施行を控えて問い合わせが急増し、カミソリなど他のアメニティ用品への展開も検討している。JTB(東京)傘下のJTB商事も柄などにムギの茎を使った歯ブラシやカミソリのアメニティを令和3年8月に売り出すなど、バイオマス原料製品の投入を強化している。(田村慶子、飯嶋彩希)

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