新型コロナウイルス禍でストレスや悩みを抱える人が増え、瞑想(めいそう)することで不安を軽減したり集中力を高めたりすることへの関心が高まっている。ホテルやオフィスビルで「瞑想ルーム」の設置が相次ぎ、瞑想システム開発では大手企業の参入も目立ち始めた。
「ただ眠るだけのホテルではなく、館内でゆっくりと自らを高める新しい過ごし方を提案したい」
野村不動産ホテルズの青木秀友社長は、4月1日開業の「ノーガホテル清水京都」(京都市東山区)に導入する瞑想ルームの狙いをこう説明した。BGMが流れアロマの香りが漂う白い洞窟のような部屋は、心と頭がスッキリするよう空間設計されており、宿泊中は何度でも無料で使える。
同日開業する「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 京都」(同市中京区)も照明やお茶の香りなどを生かした2タイプの瞑想ルームを設置する。同ホテル運営会社の水村慎也社長は「(休暇と仕事を兼ねた)ワーケーション利用が見込める」と強調。コロナ禍で宿泊ニーズが多様化する中、長期滞在客の取り込みにつなげる狙いだ。
オフィスでも瞑想ルームを導入する動きが広がっており、三井不動産が運営する「日本橋高島屋三井ビルディング」(東京都中央区)には、テナント企業が使えるポッド型の瞑想ルームがある。
大手企業の参入も目立つ。パナソニックはホテルに設ける瞑想ルームのシステムを開発。心拍や呼吸数を測り、疲労感の回復度合いなどを数値化できる。試験導入を経て、近くホテルでの正式採用も決まったという。
一方、瞑想の仕方をガイドする専用アプリも人気を集める。米カームが開発したアプリは2020年末時点で1億ダウンロードを記録した。日本でもラッセル・マインドフルネス・エンターテインメント(東京)が、音楽家の小室哲哉氏らと組み、娯楽性を高めたアプリを提供。利用者は1万人を超えている。同社の吉田真太(しんた)取締役は「自己完結型のアプリにとどまらず、個別に教わるオンラインレッスンにもトレンドが広がってきている」とする。
民間調査会社のAQU先端テクノロジー総研は21年の瞑想アプリの世界市場を5億5千万ドルと予測。25年はその4倍に膨らむとみる。担当者は「瞑想で(自律神経を整えるホルモンの)オキシトシンが出ることが科学的にも明らかになった」とし、脳科学や心理学にITを組み合わせ、心身の健康をサポートする市場として発展する可能性を指摘している。(田村慶子)