フィリピン航空新社長、会長の義理の息子が就任
【マニラ=志賀優一】フィリピン航空は、航空業務担当のスタンレー・ナン上級副社長(42)が1月31日付で社長兼最高執行責任者(COO)に就任したと発表した。経営難に陥っている同社は、会長で大手財閥創業者ルシオ・タン氏の義理の息子である同氏をトップに据え、収益改善を目指す。
ナン氏の役職は現時点では社長兼COO「代理」の肩書が付いている。外部から招いたギルバート・サンタマリア前社長(55)の今後や新社長を選任した経緯については明らかにしていない。
同社の経営はタン氏が主導しながらも、後継者選びは難航してきた。19年に元社長が退任しタン氏の娘が事業統括の責任者を務め、タン氏自身も暫定的に社長を務めた。その後サンタマリア氏が就任したが在任期間は約2年半にとどまった。新社長のナン氏が後継者として事業を継承できるか注目される。
ナン氏は地上職員(グラウンドスタッフ)を務めた後に、2008年からパイロットの職に就いた。その後パイロットや客室乗務員、整備士の管理や空港運営全般を担当した。同社でパイロット出身者が社長に就くのは1960年以降初めてという。タン氏には義理の息子を新社長に据えることで、自身の存在感を残しつつ経営を再び軌道に乗せる狙いがありそうだ。
経営難に陥っているフィリピン航空は21年9月に米国で連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請。12月には米連邦破産裁判所から、債務削減などを含む再建計画が承認されたと発表した。同社は同月末に「財務面の再建はすでに完了した」と表明している。
フィリピンは2月10日から、一定の条件のもと外国人観光客の受け入れを解禁する見通しだ。新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限で大きな打撃を受けた国際線の旅客需要の回復などをテコに収益拡大を図る。