国内線予約は「Go To」並み 宣言対象拡大も旅行需要ねばり強さ

羽田空港に駐機する全日空機
羽田空港に駐機する全日空機

2日から新型コロナウイルスの緊急事態宣言の適用対象が従来の東京都、沖縄県に、神奈川、千葉、埼玉の3県と大阪府を加えた6都府県に拡大し、旅行関連業界では「またか」と、需要減への懸念が相次いでいる。しかし全国でみれば予約キャンセルの動きは控えめで、空の便ではピーク時の国内線予約状況が政府の観光支援策「Go To トラベル」で需要が盛り上がった時期と同規模を維持。粘り強い旅行関連需要について専門家は「ワクチン接種の拡大などで移動することへの抵抗感が減った」と分析している。

「夏休みの旅行計画を今の時期に考える人が多い。それだけに(適用拡大で)予約の延期が出てくるかも…」。旅行大手日本旅行の担当者は緊急事態宣言の悪影響を懸念する。お盆期間の予約状況は現在、前年比98%と回復傾向にあるだけに不安は大きい。

ワクチン接種者に対する独自の割引サービスを実施している旅行会社ビッグホリデーの担当者も、「もともと入っている少ない予約までキャンセルになってしまうのでは」と懸念する。

実際に緊急事態宣言の対象となった神奈川県箱根町の箱根ハイランドホテルでは、50部屋程度のキャンセルが出たという。予約客に対し、事前に酒類提供の停止を伝えたところ、取りやめられたケースも相次いだ。予約担当者は「8月の予約はあきらめている」と肩を落とす。

ただ、旅行客や帰省客らを乗せる航空便や鉄道の全国的な予約状況をみれば、感染拡大は懸念材料ではあるものの、現時点での影響は限定的なようだ。

ANAホールディングスによると、6~15日のお盆期間の国内線予約件数は、前年同期比で3割以上伸びている。特にピーク時の1日9万件以上という件数は「Go To トラベル」期間中だった昨年11月の連休時と同規模という。

同社の福澤一郎専務は7月30日の令和3年4~6月期決算会見で「(国民が)PCR検査などを積極的に受けながら国内移動しているのかなと思う。予約動向は低下することなく進んでいる」と説明した。

鉄道でも、JR東日本が発表した新幹線の予約席数を昨年と比較すると、北海道が28%増、東北48%増、上越33%増など軒並み回復しており、広報担当者は「深刻な状況ではない」とした。

航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は、現在の感染拡大について「予断を許さない」とする一方、「東京にいても感染リスクはある。それならばワクチン接種の拡大などもあり、感染状況が悪い地域を避けて旅行をするとの判断になっているのだろう」と話す。(福田涼太郎)

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