「将来見込めない」観光地は悲観 「白書」が示す厳しい現状

赤羽一嘉国交相(春名中撮影)
赤羽一嘉国交相(春名中撮影)

観光庁が15日に発表した観光白書は、新型コロナウイルスの旅行業界に対する影響の大きさが改めて浮き彫りになった。国は日本人による国内旅行の需要回復や訪日外国人客(インバウンド)が戻ってくることを見据え、疲弊した観光地への支援や段階的なツアーの試行などを盛り込んだ政策プランで対応。ただ、観光地からは「現時点で将来のことを見込めない」と悲観的な声も上がる。

「コロナ禍で観光関連事業者は大変に厳しい状況だが、これまでの観光政策を立ち止まって振り返る機会になったのも事実」

赤羽一嘉国土交通相は15日の閣議後会見で、今回の観光白書が示した現状の厳しさを指摘しつつ、メリットがあったことも訴えた。

具体的には、長距離移動を避けた近隣地域の観光活発化で地元の観光資源の再発見につながったことや、旅先で休暇を取りつつテレワークをする「ワーケーション」の拡大など、新しい需要の発掘につながったことを挙げて評価した。

観光庁は昨年12月策定の「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」に沿って支援策を実施。その中では、観光施設や観光街の再生を目的とした補助制度の新設、融資制度の大幅拡充を明記。インバウンドの受け入れ環境整備の促進支援なども進める。

一方、感染拡大で中止されている政府の支援事業「Go To トラベル」の期間延長や、国内外の感染状況を見極めた上でのインバウンド向け小規模ツアー実施などを掲げており、現状ではワクチン接種が進まない限り難しいとみられる支援策も少なくない。

インバウンドへの依存度が高い観光地は特に客足回復が遅れる恐れがあり、より厳しさを増している。昨年の地域別延べ宿泊者数を前年比割合で調べた観光庁のデータでは、落ち込みが大きい近畿(57%減)、関東(52・6%減)、北海道(50・1%減)は、下落幅のうちインバウンドが5割近く~4割近くを占める。

インバウンドの延べ宿泊客数がコロナ禍前は全体の3分の1(約21万人)を占めていた北海道ニセコ町。昨年度は183人と壊滅状態で、店をたたむ事例も出ているという。町商工会の担当者は「予約は入るけど感染状況が収まらずにキャンセルという繰り返し。消費マインドの強い冷え込みは国内外を覆っており、ワクチン接種が進んでも実際の客足回復は遅くなると思う」と厳しい見方だ。

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