都心から地下鉄で10分の福岡空港 ホテル、商業施設誕生で「飛ばない人」も満足の空間に

滑走路1本当たりの発着回数が「日本一過密」といわれる福岡空港=3月3日、福岡市博多区(一居真由子撮影)
滑走路1本当たりの発着回数が「日本一過密」といわれる福岡空港=3月3日、福岡市博多区(一居真由子撮影)

滑走路1本当たりの発着回数が「日本一過密」といわれる福岡空港で3月20日、2本目の滑走路の運用が始まる。空港の運営会社は、路線拡大で東アジアトップクラスの国際空港を実現する将来像を描く一方、空港ターミナルに直結したホテルや商業施設の建設で、航空機を利用しない地域住民をも集客する戦略だ。インバウンド(訪日外国人客)を含む航空旅客の増加を背景に、国内の空港では滑走路の増設やターミナルビルの改修が相次ぐ。地方空港では運営が民間に委託されたことで特色を打ち出す動きも目立ち、空港を核とした街づくりが本格化している。

オンリーワン目指す

福岡空港では新たな滑走路の運用で、発着できる回数が1時間あたり2回増の40回となり、年間の滑走路処理能力は約1万2千回増の18万8千回となる。国土交通省によると、令和5年度の福岡空港の国内・国際線の着陸回数は羽田、成田に次ぐ3位。滑走路が1本しかないため、航空機の混雑から遅延が常態化しており、西日本の拠点空港の一つとして滑走路増設が期待されていた。

福岡空港で開業予定の複合施設のイメージ(福岡国際空港提供)
福岡空港で開業予定の複合施設のイメージ(福岡国際空港提供)

現在の滑走路との間隔が約210メートルと狭いため大幅な発着増は見込めないものの、2本目は1本がトラブルが閉鎖された場合に補完的に使えるなど、安定的な運航に寄与すると期待がかかる。

同空港は平成31年4月に民営化され、地元企業などでつくる「福岡国際空港(FIAC)」が運営。市中心部から地下鉄で10分と、世界でも屈指のアクセスの良さから、高い集客力を持つ空港としても知られる。FIACも滑走路増設をにらんで先行投資を行い、国際線ターミナルビルを増改築した。今後は店舗やホテルなどが入る11階建ての複合施設を建設する。

今月5日に記者会見したFIACの田川真司社長は「日本らしさや福岡らしさといった個性を出し、オンリーワン空港を目指す」と意気込んだ。

新たに建設する複合施設では飲食や物販店を充実させ、航空旅客以外の集客も狙う。事業計画では英国のスカイトラックス社が実施する格付け評価で、世界最高水準の「5スターエアポート」取得を目標に掲げた。

エンタメも充実

国内の空港は新型コロナウイルス禍の収束を受けた旅客の回復に伴い、受け入れ環境の整備が急務となっている。各空港ではターミナルの増築や改修といった機能強化が活発化しており、関西国際空港では開港初となる第1ターミナルの改修工事を実施、3月27日にグランドオープンする。神戸空港でも4月18日に第2ターミナルの運用が始まり、国際チャーター便の運航が可能となる。

福岡空港と同様、地方では空港機能だけでなく商業や娯楽エリアを充実し、「エアポートシティ」として地域の拠点づくりをする例も目立つ。

北海道の新千歳空港では「ドラえもん」や「ハローキティ」などの人気キャラクターの世界を体験できるエリアがあり、施設を目当てに地域住民が多く訪れる。運営する北海道エアポートは「エンターテインメント空港をテーマにリニューアルし、ファミリー層や若い女性が多く訪れるようになった」と説明する。

地元とも連携必要

平成25年施行の民活空港運営法に基づき、国は財政負担の軽減や民間ノウハウ活用などを目的に、地方空港の民営化を進めてきた。福岡以外にも仙台や神戸、高松、熊本などの空港で民営化が進み、現在国内97空港のうち21空港で民間による運営が行われている。

地方にとって空港の活性化は地域の生き残りを左右するだけに、各運営会社は地域活性化や収益拡大に向けて特色を打ち出すのに躍起だ。空港・航空行政に詳しいMK総合研究所代表取締役所長で北九州市参与の幕亮二氏(59)は「民営化で路線の誘致は確実に進み、コロナ禍で足止めされていた投資も今後は活発になる」と指摘する。

ただ、国内線ではコロナ禍で普及したテレワークの増加でビジネス客が戻らず、観光需要に頼る側面が大きくなる。地元住民を呼びこめるのは都心部に近い一部の空港に限られることもあり、幕氏は「地元と連携して観光客の消費を促す取り組みのほか、国外への旅行客を増やすアウトバンドの促進も重要だ」としている。(一居真由子)

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