栃木県で「農泊」が訪日客に人気。11市町12地域で実施。県も今年度から受け入れ整備へ。

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畑作業をしながら、農家型ホテルについて説明する佐々木さん(大田原市で)
畑作業をしながら、農家型ホテルについて説明する佐々木さん(大田原市で)
農作物の収穫体験をする訪日客ら(大田原ツーリズム提供)
農作物の収穫体験をする訪日客ら(大田原ツーリズム提供)

 農山漁村を訪れて観光や農業体験などを楽しむ「農泊」の宿泊者数が県内で増えている。インバウンド(訪日客)からも人気で、県はさらなる誘客に向けて今年度から地域の受け入れ態勢整備に乗り出している。

 5月初旬、大田原市宇田川の農家型ホテル「和印―WAIN―」にアメリカ人の父と息子が4日間滞在した。2人は国際的な観光地である日光市を訪れる一方、このホテルの敷地内の畑で採れた野菜を堪能したり、近くをサイクリングし、田園風景を楽しんだりしたという。

 ホテルは同所で農業を営む佐々木真弓さん(45)とインド人の夫が敷地内にあった古い蔵と納屋を改修し、経営している。元々民宿経営が夢だった佐々木さん夫婦が、大田原市の観光地域づくり法人(DMO)「大田原ツーリズム」の助言を受け、訪日客を想定してゲストハウス風に改修した。

 約半年間で、訪日客だけでも約150人泊の実績がある。佐々木さんは「外国人は田舎でゆっくり過ごすことを好む。梅酒やみそ造りなどの体験プログラムもゆくゆくは用意したい」と希望を語る。

 大田原市は農業を軸とした観光に力を入れている。

 大田原ツーリズムは市内を中心に約180軒の農家と連携。訪日客以外にも小中学校や団体旅行を農村に呼び込み、農泊や農業体験などを手掛けている。農家型ホテルもその一環で、同社と地元農家が協力して整備を進めており、現在6施設を数える。

 昨年度、同社が関わった農泊の延べ宿泊者数は7865人で、2012年の事業開始以来最多を記録した。このうち外国人は1234人だった。インド人の夫と佐々木さんは英語が話せるが、ほかの施設では外国語が苦手でも翻訳アプリなどで十分対応が可能だという。

 豊かな自然の中で農家と交流しながらの本格的な農業体験が人気といい、藤井大介社長(48)は「アクセスが不便な農村でも魅力をしっかり訴求すれば外国人は来てくれる」と語る。

 県などによると、県内では大田原市を含む11市町12地域で農泊が実施されているほか、新たに実施を検討している自治体もある。ただ、各地域では宿泊施設や体験プログラムの質や量に大きな差があり、ノウハウの蓄積が進んでいないところも多いという。

 このため、県は4月、県農業振興公社内に農村への訪日客受け入れに向け地域や農家らをサポートする「農村プロデューサー」を設置。訪日客が農村部まで足を運び農業体験を楽しめる計画を地域で作成したり、農泊の受け入れ態勢を整えたりする取り組みの後押しなどを始めた。

 プロデューサーは、元県職員でマーケティングなど農政部門で幅広い見識や人脈を持つ杉本宏之さん(65)が務める。地域資源の掘り起こしや受け入れ態勢づくりに対する勉強会の開催支援などを行うといい、杉本さんは「栃木県は豊かな自然、日本酒、陶器など潜在能力がある。今ある資源を組み合わせ、農村の魅力を高めたい」と話している。

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